short story
□ホワイト
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〈 ホワイト 〉
ーーカチ
時計を見るとちょうど12時だった。
私はアイスコーヒーをテーブルに置いた。
今日は涼しい。
夏の始まりにしては。
海からの風が家の中に吹き込んでくる。
そして、それが頬を撫でた。
頬杖をつきながら、カーテンが揺れるのを見ていた。
「……」
私はなんだか風になったようだった。
いつもより軽く感じる自分の体を立たせて、コップを持った。
ソファーに腰掛けると、さらに自分の体が浮いているように感じた。
体重を全てソファーに預けて、目を閉じる。
ベランダの向こうからさわさわと草が擦れる音がした。
鳥たちの会話が聞き取れそうな気がした。
波がなにを問いかけているのか、なんとなく分かる気がした。
ただ気がしただけだ。
あの人はいつ帰ってくるだろうか。
昨日はいつ帰ってきたっけ。
今、なにをしているだろうか。
今日、なにをしようか。
あの人は、どこに行くって言っていたっけ。
…ああ、ぼんやりして、よくわからない。
風が気持ちいい。
-ガチャ
……あ、帰ってきた…
ああ、でも……すごく…眠い…
今、何時だっけ…
夕方じゃ…ないよね……
瞼が重い……
「ーーー…さん……」
あの人が、名前を呼んでいる……
でも……
………眠いなあ…
「 __________ 」
…寝るか寝ないかの狭間でキスをされた……
気がした…
end