界と界

□背中合わせの恋心
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心底嫌そうに言う。
するとヨザックは向き直ったかと思うと、いきなり擽り始めた。

「うわ…よせ……やめっ………ヨザ!」
「いいえ、やめませんよ。傷付いたのでねぇ。心底嫌そうに気色悪いは、失礼だろうが!」

手足をばたつかせて、抵抗しても体格の差で抑え込まれてしまった。
思う存分、笑い転げた頃には、髪はぐしゃぐしゃに、服も草や土が付いて汚れてしまった。
城に戻ったら、さぞ目を引くだろう。

「はぁ……疲れた」
「俺も疲れた」
「お前のせいだろ」
「そうっすねぇ。でも気も晴れて、すっきりしたでしょう」

にやっと笑われると、確かにそうなので、何も言えない。しかしなんだか、やられっ放しというのも釈然としないので、ヨザックの傾けていた瓶を奪って飲み干してやった。

「あー、高かったんすよ。それ」
「だったら、俺のを呑めばいいだろう。俺のも十分高い」
「さいですか。では、有り難く」

ヨザックはまだ中身が残った酒瓶に口づけた。
笑い転げたお陰で、嫌な気分もすっかり飛んで行った。

「ヨザ」
「はい?」
「お前は、俺の背中を守ってくれるか?」

ヨザックの青空を切り取った目に一瞬、驚きの色が差し、そして嬉しそうに眇た。

「もちろん、喜んで」

「あんたの背中に、太刀傷なんて負わせませんよ」

その顔はとても真剣だった。

「ヨザはいつも俺の欲しい詞をくれるな」
「そりゃあ、愛してますから」
「…本気だったら…気色……」
「それ以上、言ったらまたやりますよ」

とりあえず思ったことは、そのまま飲んでおいた方が無難だった。

「一緒に育ったんだから、わかるのは当然だろ」

本当にヨザックは俺の望んだ詞をくれる。




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