界と界

□背中合わせの恋心
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「こーんな所にいたんすかぁ。隊長」

背後からやたら楽しそうな声が掛けられて、巡らせていた思考を中断した。

「ヨザ……か」
「はぁーい。グリ江よん」

見事な筋肉をくねらせながら、足取りも軽く隣にやってきた。

「よく、ここだとわかったな」

昔は足繁く通っていた荒れ野。
昔と違うのは、荒れ野の中に可憐な野花が咲いて、荒野を彩っていること。
そして二人とも大人になっていること。

ユーリの魂を見届けて以後、ここにやってくることはなくなり、さっき急に思い出して、足を向けたのだ。
本当によくわかったものだと感心と呆れが浮かぶ。

「わっかりますよ。なんせ、愛してますからね」
「すぐに、そうやってはぐらかすな」

溜め息混じりに、掴み所がない幼馴染みのヨザックを見やると、沈む夕陽に髪の色を深くさせていた。
野郎二人で、並んで荒れ野に沈む夕陽を眺める。
一体どこの青春ドラマだ。

「しょうがないだろう。なんとなく、ここに居そうって思うんだから」

茶化すことなく、笑いを浮かべてそう言ったヨザックに、返す言葉が浮かばなかった。
結局、視線と共に話題を反らすことしかできなかった。

「……何故…」
「はい?」
「髪を……伸ばしていた時期があっただろう。何故、伸ばしていたんだ?」

あの時と同じように、空を仰いだ。視界に広がるのは、藍色の闇ではなく、緋色の夕陽。
そして隣同士で、いい大人。
時は変わり、移ろい、けれど変わらず、近い所にいる。



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