界と界

□蛍行灯
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その仕草を繰り返していた時、コンラッドからストンと表情が抜け落ちた。一瞬、幽鬼のような表情を浮かべて、指に留まる蛍を眺めた。

「こんな話を聞いたことがある。
蛍は亡くなった者たちの生まれ変わりで、夏の一晩、愛する人の元に帰ろうとするそうだ。
それが本当だったら……切ないよな」
「……コンラッド」
「ヨザ……っな」

どさりと露草の上に倒れ込むと、その勢いで蛍たちが一瞬舞い上がった。それから何事もなかったように、ふわりふわりと宙を飛んだ。
薄ぼんやりと、二人が縺れて倒れ込む姿が照らされる。

「…消えちまいそうだった…。コンラッドが……蛍に連れてかれそうに見えた…」
「……馬鹿だな。ここにいるだろ」
「そうだな」

二人は顔を合わせて、蛍が怯えないように声を殺して笑い合った。
昔もこんな風に草原を転げ回って、笑い合ったものだ。いつからあんな風に笑わなくなったのだろう。

「……好きだ。コンラッド」
「突然なんだ」
「なんか言いたくなった」

コンラッドの肩に顔を埋める。噎るような青々しい夏草の香りとコンラッドの微かな汗と酒の香りが肺を満たして、とても落ち着いた気分になる。
ちゃんと隣にいるということを実感する。

「擽ったい」
「変な気分になるか?」

ふっと吐息を耳に掛けて、耳を甘く咬むと、息を詰めて声を殺すのが伝わる。

「外だぞ」
「誰も来やしないさ」

目で重ねて問うと、コンラッドの腕が首に絡んで、口づけをねだった。

「珍しく積極的だな」
「たまには、いいだろう」

望まれるままに唇を重ねて、舌を誘う。甘い酒の味が興奮材料になって、舌を絡めては深く吸い上げて、再び絡め合う。深くなる口づけに首の後ろからぞわりと快感が溢れて、全身に熱が回る。




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