頂戴品

□淫
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「…自分の家で気配を殺す必要があるのか」
白葡萄酒を一本棚から出すと、それを静かに、すぐ脇の飾り棚に置く。
「べっつに。特に意味はありませんよ」
などと言いながら、ヨザックの手が後ろから伸び、腋の下を通ってシャツの上からコンラートの躯を撫でまわす。明らかに淫らな意図を持った動きにコンラートが呆れた視線を送れば、シャツの襟元を噛んで引っ張り、露になった肩やら鎖骨の上の窪みやらに吸い付くヨザックが見えた。

独特な双眸を酒棚に戻し、扉を閉めようとして、不意に耳を甘噛みされて眸が細まる。
「…!」
棚の硝子面に映るそんな幼馴染みをみて、ヨザックもまずは満足してみる。パンやチーズが自分の存在を主張するかのごとく香ばしい香りを漂わせているが、今のヨザックは幼馴染みに餓えていた。

「………たまにはベッドの上で…とはいかないものかな……」
「オレが臨戦態勢なのは隊長がよく知ってるはずでしょー」
コンラートの骨張った手にぴったりと己の手を重ねて、ヨザックは酒棚の扉をひたりと閉めた。
コンラートは右腕を棚に押しつけ、平坦な扉に指を鉤のように引っ掛けようとする。
ヨザックは後ろから脇腹をそっと撫で、そのままシャツの釦に手を掛ける。実に手慣れた仕草で外して行く手に傷跡の残った自分の左手を重ねて、コンラートは今更な制止の意思表示をしてみる。

「ほらー、おててが邪魔でちゅよー」
可愛いものを愛でるときの異父兄の口調を真似る幼馴染みの声に、コンラートは思わず吹き出した。
「上手いな」
「上手いでしょ」
あれを誰にも悟られてないと思ってるんだから、閣下も可愛い方だよなあ、などと後ろでぼやきながら、ヨザックはおざなりな制止の手をそっと剥がす。
胸を露にはしたが剥ぎ取るようなことはせず、シャツの裾を引っ張りだしてベルトを外しにかかった。屈強な左腕で一際大きい傷跡が残る腰を引き寄せ、少し突き出すような格好にさせる一方で、右手は静かに這い上がり胸の突起を軽く摘む。
「……!」

背中がびくんと波打ち、腕に額を押しつけて息を詰める様子が面白い。指の腹で押しつぶしたり、人差し指でくすぐるように先端を弄んだりすれば、抱き込んだ幼馴染みが抗いきれない快感にかすかな嬌声を上げはじめていた。
「……、…っふ、ぅん…っ」





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