頂戴品

□Please turn to me.
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「――で、そこが終わったら机の周りもそうじだ。ホコリを残すなよ」

俺の恋人は今、物凄くご機嫌斜め。

「その後は洗濯。ほら、これもちゃんと洗っとけ」

頭の下の枕を手首だけで器用に投げて来たその目はとても冷たい、のだと思う。露骨に顔を背けられていて表情は伺えないのに、まるで戦場で敵と対峙しているかのような気分にさせられる。

「あの……ヨザ」
「何?」
「お前の部屋は元々きれいだし洗濯物も溜ってるわけじゃないから、別に今日やらなくてもいいんじゃ…ほら、せっかくの休」
「ウェラー卿コンラート閣下」

……今確実に部屋の気温が二度下がった。いや、下がったのは俺の体温だろうか。

「――ハイ」
「そのせっかくの休みにオレがやりたい事もできず一日中寝ている羽目になったのは一体誰のせいでしょう?」
「……よろこんでおそうじさせていただきます……」
「分かればよろしい」

確かに昨日歯止めが効かなかったのは申し訳ないけど、それはお前が可愛すぎるのが悪く!……などとは到底言い出せる雰囲気ではなく、俺は黙って掃除に取り掛かった。

「……」

それでも未練がましくちらちらとヨザックへ目を遣るものの、ちっとも振り返ってくれる気配はない。

……せめて睨んでくれた方がまだ楽……。

「、ヨザック…本当にごめん」
「うるせぇな。詫び入れる暇があったらさっさとやれよ」
「ヨザ……」

謝らせてももらえない……もしかして本当に嫌われた…?

「何しょぼくれてんだよ。んなもの早く済ましちまえ」
「うん……」
「……終わったら今度は……あんたの腕を、借りるからな」
「え?」

急にくぐもった声に振り向けば、布団に顔を埋めても隠しきれていない赤くなった耳。

「ヨザ……?」
「……枕がなけりゃ寝にくい、だろうが……」
「!」

完全に不意打ち。

一瞬硬直した後、すぐに口元がにやけてきたのが分かった。きっと自分は今、とてもだらしない顔をしているのだろう。

「……やっぱりお前は可愛すぎるよ、ヨザ」
「はぁ!?誰が可愛いだ誰が!意味分かんねぇこと言ってないで早く手を動かしやがれ!」
「かしこまりました、お姫様」
「姫言うな!」

でもたとえどんなに酷い顔を見せることになってしまっても、お前の顔が見えないよりはずっといいと思うから。


だからそろそろ、こっちを向いて?


Fin
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