界と界
□昼下がりの贈り物
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昼下がり、のんびりと読書に勤んでいた。
彼方からユーリが持ち込んだ習慣のせいか、今日は城内が騒がしい。
ユーリがいるけれど、今日は離れていることになった。ギュンターと弟が張り付くから、問題ないということで。
ゆったりと寛いでいた。
さっきまでは。
「……これは何だ?」
目の前にある、ピンクのラッピングが施された可愛いらしい箱。大きさは、掌ぐらい。
それを持ってきた男は、横でニコニコしている。
喜色満面の笑みを浮かべているのは、元部下で幼馴染み、一応恋人。
「やだなぁ。バレンタインのチョコですよ」
「……」
「もちろん、俺の手作りです………って、何、捨てようとしてんすか!」
自然な動作で箱を、ゴミ箱行きにしそうだったコンラッドから、慌て箱を奪い取った。
「食べれるのか?」
「のかって、あんた。食えますよ。当たり前に。見もしないで捨てようとしないで下さいよ」
制作にはもちろんのことだが、ラッピングにだって時間を掛けた。
男の武骨な指で、ちまちまやるのはとても大変だった。
教えてくれた同僚のように巧くはできなかったが、自分なりには頑張った結果だ。
それを
「見ようともせずに捨てようとするなんて、乙女の純情を踏み躙るなんて、最低よ」
「腰をくねらすな。気色悪い」
「酷すぎだ。あんた」
背中を向けて、のの字を書きながら意地けるヨザックに溜め息しか出てこない。
確かに、今のは言い過ぎた。
くれるかもしれないとは思っていた。
それが、本当に来たら、嬉しくなる。
つい本心を隠してしまったら、そんな台詞が口を吐いたのだ。
照れ隠しだと、気が付けよ。
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