love

□三日月の夜に
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「僕、狼男好きやねん」

あまりに唐突な一言に、
信号が赤のまんまでいてくれる時間は短いのに
俺は思わず助手席に顔を向けた

なんなの、いきなり

まあ、あんたの話の殆どは
あんまり脈絡のない気分次第の話題だったりはするけどさ

「へ?」

「狼男。知っとるやろ?あの、ハロウィンの」

最後に出てきた単語で、やっと話が頭の中でつながる。
明日は確かに、その幽霊の祭典だ。

どこの国の妖怪かもわかんないようなお化けの祭典をイベントにしてしまうなんて

宗教に果てしなく寛大な日本人らしいよなあ、なんて

俺にしては珍しく、
ちょっと小難しいことを考えたりして

「ああ、...で、なんで好きなの?」

「なんか一途な男って感じするやんか、」
まるで子供みたいに、目をキラキラ輝かせる横顔に
呆れて吹き出しそうになる

ていうか、その話って
ずいぶん前の映画の設定でしょう?

やっぱりあんた、俺じゃかなわないくらいのロマンチストだね。

訳のわかんないようなロマンチックなこと零したって

昼間じゃ間抜けに聞こえても、
夜にあんたが喋ると不思議と格好が付いてるよ。

「そんなこと言ってると手癖の悪い狼に食われるぞ」
ほら、俺だってつられて馬鹿みてぇな答えを返すだろ。

二人してこんな調子なら
今日は月も出てることだし、あんたの家の玄関まで
言葉遊びでもしようか。
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