love
□コーヒーカップ
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さっきから、太一くんと一秒も目が合わない。
せっかく俺が太一くんの真後ろに座っているというのに。
ていうか、俺が気を利かせてさっき淹れたコーヒーだって
「ありがとう」なんて言っておいて、
一口も飲まないまま湯気が立たなくなってるじゃないか。
そんで、俺は不貞腐れて
自分のコーヒーを
その華奢な背中を恨めしそうに見つめながら(できるだけその恨めしさが伝わるように)
もうすっかり冷め切ってるのに、
ゆっくりすすっているというわけだ。
ていうか、普通人が家に来てんのにパソコンいじる?
太一くんが普段俺に冷たいのは慣れっこだけど
それはないんじゃない、と思う
まあそんな状況でも、
近くにいられるだけで満足して
席を立とうとはしてないのは
俺から離れてしまったら、距離はもっと遠くなりそうなのがわかっているからだ
「ねえ、太一くん」
「ん?ああ、ごめん」
その台詞、もう5回目だよ。
そこまで誠意の伝わんない謝罪も珍しい。
「いや、いいんすけどね、まだかかりそう?」
「...うーん、もうちょっと」
ああ、それもさっきと同じ。
いつになったら目を見て
話せるんだろう。
すごくすごく近くにいるから、
簡単にできることのはずなのにな。
まあ、もういいんだけどさ、