love

□コペンハーゲン
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「シゲ、このあと空いてる?」

ふと時計を見て気づいて、
まだ誰も口を開いていないのをいいことに
慌てて誘ってみる。

プレゼント、明日渡すつもりだったんだけど
今日隣にいれるなら、
ずっと格好がつくはず。


「え?今日はもうこれで上がりやけど」

「じゃあ飲み行こうよ」

机の裏でガッツポーズを決めたのに勘付かれないように
大人なフリして笑って、
シゲの肩を抱いて楽屋を出る。

俺のすぐあとに気付いた松岡が
羨ましそうに唇を噛んでたけど、こんなの早いもん勝ちだよ。

「珍しいなぁ、ぐっさんが僕だけ誘うの」

そういえばそうだ。
かれこれ20年近く一緒にいるのに、
二人だけで飲んだ回数は片手で数えられるくらいしかない。

最近2人だけで飲んだのっていつだっけ、と思い出そうとして、
随分前のような気がしたから
記憶を辿るのはやめておいた。



というか、それならなおさら幸運だ。
こんな記念日に久々に2人きりだなんて。

けれど、もっとよかったのはきっと2年前だな。
あの時に2人きりで杯を交わせたなら、どんなによかっただろう。

こういう細かいとこ、かっこよくなんないのが
俺の悪いとこだ。

「そう?ねえ、シゲの好きな店連れてってよ」

「自分で誘っといて店は人任せかいな、」

シゲは嬉しそうに苦笑いをする。

文句垂れるのに、こうやって俺があなたに何か任せると嬉しそうにすんの、
俺知ってんのよ。

ていうか、今日なんて俺の好きな店行ったんじゃ意味がないし。
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