love
□コーヒーカップ
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カップの中のコーヒーはもう尽きてしまった。
さあ、これからどうやって暇つぶししよう?
あんまり、邪魔しないほうがいいよね。
背中に向かって語りかける時間が長くなるだけだろうし。
暇を持て余して、
カップの中のスプーンをくるくる回す。
まるで子供みたいだ。
スプーンがちょうど2周まわったとき、
俺が淹れたコーヒーを一気飲みしたあと、
喉から絞るような声を間抜けに吐きながら
太一くんがぐっと背伸びをした
やっと、目が合う
「お前、カップの中でスプーン回してたろ」
「あ、すいません、嫌いだっけ?」
「いいや、」
−お前、それ昔から癖だよな。
太一くんはなんだか一気に年上の顔になって
久々に見るような優しい顔で俺に微笑む。
「...寂しくなった時の、癖。
ほら、体育座りして、カップの中のスプーンとか回して。
昔からだよ、」
次は申し訳なさそうに眉を下げて、
いつもより俺に近く腰掛けた。
今日の太一くんはなんだか忙しい。
まるで季節みたいに、行動が変わっていくから
「...そう、」
「ごめんな。」
低い声で鼓膜が溶けそうになる。
俺の髭の生えた顎を、太一くんの骨骨しい指が
ゆっくり撫でてゆく。
俺より背が低いから、
結局顎を上げるのは太一くんなのに
彼が主導権を握りたがるのは、なんでなんだろう。
まあ、そんなことはどうだっていい。