06/16の日記

23:53
父の日ということで
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今日は父の日ですね。百神で親子関係というとあまり見かけない気もしますが、いたらいたで皆個性的な家族ばっかりですよね。こんな家族いたらみてみたいわ、みたいな。


まぁこの前振りとは関係ないのですが、父の日みたいな話を書きたいなーと思いまして。はい、いつも通りの突飛な思いつきです。そこで、トールとロキのお話を書こうかなと。ふたりは実の親子というわけではありませんが、なんというか、そういう絆はあると思うので。あえてこのふたりにしました。


それじゃいきまーす


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雪の森はその名の通り、雪に閉ざされた土地だ。雪が絶えず降り注ぎ、なにもかもを白に染めてしまう。


まだ薄暗い早朝のこと、トールは外出する準備をしていた。火を焚くための薪を集めるためだ。


雪の森に生えている木はすべて、枝葉から幹まで、すべて雪に覆われているといっても過言ではない。燃料として薪を使うには、雪で湿ってしまった木を一度乾かさなくてはならない。薪が切れてしまってから補充するのでは遅いのだ。薪が乾く前に、命の灯火は消えてしまう。


だからトールはこの日も、薪を取りに行く。今朝は吹雪いてないので今のうちに出かけてしまおうと、トールがドアを開けると。


「やっほー」

「…これは、珍しい客が来たものだな」


トールの家の前にいたのは、悪名高き北欧の問題児──ロキだ。いつものように右手で魔の名残をいじりながら、気だるげに立っている。トールはロキの登場にほんの少し驚いたが、すっと家の中に戻ると、ロキに家に入るようにとうながした。


「これ、あげるー」

「む?」


家に入り、近くにあった椅子に腰をおろしたロキは、トールにむかって手みやげを放り投げた。


「…これは」

「そこら辺で拾ったー」


トールに渡されたのは、ひとまとめの薪だった。


「わざわざ持ってきたのか」

「べっつにー?だからそこら辺で拾っただけだって」


キハハ、と小さく笑うロキに、トールにそっと薪に目を落とす。


きちんと乾かされ、雑ではあるが紐で縛られた薪。


(そこら辺で拾った、か…)


トールはほんの少し表情を柔らかくすると、薪を持ったまま台所へと向かう。


「腹がへっただろう、スープを温めるから待っていなさい」

「なんのスープ?」

「さぁな。少なくとも、毒ははいっておらん」

「なーんだ、つまんないなー」


ロキとの会話を続けながら、トールは火を熾そうと薪の上で火石を打ちならす。


火石がかちかちと音をたてるなか、一際大きな『パチンッ!』という音が響いたあと、薪に火が点いた。


トールはしばらく火を眺めていたが、振り返ってロキに言った。


「今、薪に火をつけたのはお前か?」

「さぁ、どうでしょーか?」


クスクスと笑い、のんきに口笛を吹き始めるロキ。トールはしょうがないといった感じに息をつくと、スープが入った鍋を火にかけた。


「ねーまだー?」

「もう少しだ。それくらい我慢しなさい」

「はいはーい」


他愛もない事を言い合いながら、静かに時は流れていく。


(かつては、こんな日常もあったのだな…)


自分がこうしてロキに飯をつくってやったことも、今となっては遠い過去の話だが。


トールは少し、昔を懐かしんだ。



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─…


はい、これで終わりです。


これはあくまで個人的な想像ですが、トールはロキの育ての親みたいな感じだったのかなーと。小さい頃はひとりぼっちだったロキに、はじめて愛情を注いだのがトールだっだ…的な。いや、もしかしたら違う理由があるのかもしれませんし、先ほども言った通りあくまで個人的な想像なのですがね。ただそんなんだったらいいなーってだけです。

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