11/01の日記

01:32
ハロウィン、続き
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風が森のなかを吹き抜けていく。ザワザワと木の葉が擦れる音が、夜にどこか不気味な雰囲気を加えていった。


普通の女性ならおびえてしまうような場所でも、エーディンは全然平気だ。むしろそういう場所は好きである。しかし、そういう所に、どちらかと言えば小心者な彼──ミディールが住んでいるのは少し意外に思ったものだ。まあ、彼は彼で思うところがあり、ここで暮らしているのだろうが。


(こんな離れにいなくたっていいじゃない)


木の枝に引っかかって服が破れないよう気をつけながら、エーディンはミディールの住まいへと向かっていた。


エーディンは思う。


(アンタの考えることなんて、全部わかってるんだから)


そうこうしているうちに、ミディールの家に着いた。明かりがついているので、やはり家にいるのだろう。


エーディンはドアを数回ノックすると、ミディールに声をかけた。


「ミディール、いるんでしょ?」


ほどなくして、ドアが開けられる。そこから姿をみせたのは、オオカミのような手足と耳をもつ、青い髪の青年だった。


「エーディン…どうしたの?こんな時間に」


少し戸惑いながらも、エーディンに中にはいるよう促すミディール。エーディンはミディールに続いて家にはいると、近くにあった椅子に腰かけ、ミディールに尋ねた。


「ねぇ、どうして今夜のパーティーに来ないわけ?」

「…だって」


床に視線を落とし、小さな声でミディールは答えようとする。しかし、それを遮るようにエーディンはさきに答えを口にした。


「どうせ、僕が行ってもそんなに盛り上がらないとか、エーディンも僕がいないほうがもっと楽しめるとか、思ったんでしょう?」

「…うん」


小さく頭をたれたミディールに、エーディンは眼光をきかせながら言った。


「アンタがいない方が楽しめるなんて、いつ誰が言ったの?」

「……」

「あたしはけっこう、何でも一人で楽しめちゃうこと多いけど。けどね、アンタと一緒でつまらなかったことなんて、一度もなかったわよ」

「…ありがとう、エーディン。でも、やっぱり僕はパーティーにはいけないよ」


仮装なんてできないしね、と。ミディールは苦笑した。その格好でも十分ハロウィンらしい姿だったが、ミディールはなお、そんなことを気にした。彼のことだ、仮装の準備などしていなかったのだろう。


エーディンは少し考えると、ため息とともに椅子から立ち上がって、ミディールの前に立った。


そしてミディールにむかって手を差しだし、こう告げた。


「トリックオアトリート」

「…え?」

「え?じゃないわよ。トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃ、イタズラよ」

「え、えっと…」


エーディンの突然の言動に、ミディールは戸惑う。


「ご、ごめん…今はお菓子、持ってないんだ…」


ミディールがそう答えるのを聞いて、エーディンは「そう」とだけ応じた。


「それじゃイタズラね」


エーディンは未だに状況が飲み込めてないミディールを自分が座っていた椅子に座らせると、自身の髪を結っていたリボンを外し、バッグから櫛と手鏡を取り出した。


「な、なにするの…?」

「いいからおとなしく座ってなさい」


エーディンはそう言うと、ミディールへの『イタズラ』を始めた。


◇◆◇◆


「はい、おしまい」


エーディンは手鏡にミディールの顔を映した。その顔には、驚きの表情が刻まれている。


「これって…」

「あたしがいつもしている髪型よ」


いつもは後ろの低い位置で束ねられているミディールの髪は、二つにわけられて高い位置で結ばれていた。可愛らしいリボンが、ミディールの動きにあわせてゆらゆらとゆれる。


「でも、なんで…」

「仮装しなきゃ、パーティーにはいけないんでしょ?だったら…」


少しだけそっぽをむいて、エーディンは続けた。


「あたしの仮装をすればいいわ。服は無理だけど…髪型だけでも十分よ。立派な仮装だわ」

「…エーディン…」

「か、勘違いしないでよ。これは『イタズラ』なんだから。皆の前でその髪型みせて、精々からかわれるといいわ」


そそくさと道具を片づけるエーディン。ミディールはしばしポカンとしていたが、『イタズラ』にこめられた思いを感じ
、自然と笑みが浮かんだ。


「…ありがとう。でも、エーディンの髪が…」

「あたしはこのままがいいのよ。たまには下ろすのも悪くないわ」

「…そっか」

「用意はできたことだし、さっさと行きましょう。じゃないとパーティーが終わっちゃうわ」

「うん」


明かりを消し、夜の森へとくり出すエーディンとミディール。


「エーディン」

「なに?」

「…ありがとう」

「…べつに、どうってことないわ」


冷たい風がふく中、いつの間にか繋いでいたふたりの手は温かいままだった。






◇◆◇◆


勢いだけで書ききりました。エーディンちゃんとミディールくんのお話でした。

パーティー会場着いたあと、からかわれるのはミディールだけじゃなくてエーディンも巻き込まれるよね絶対。皆からヒューヒュー言われて二人して顔真っ赤にしてたらいいのに。可愛いなぁもう。

そんなこんなで、ハロウィンねた終了!

お付き合いありがとうございました



☆コメント☆
[ディオ] 11-01 08:33 削除
こんにちは。ディオです。

ハロウィン両方読ませてもらいました!

エーディンもミディールも可愛いですよね。

リクエストや他の神様の夢も楽しみに待っています。

最近、本当に寒くなって来たので体調には気を付けて最新していって下さい。

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