劣等感
□紫色の薔薇
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自分は何も信じない。何も愛さない。他人に対し干渉をしなければ、感傷の念も抱かない。だから例えば、自分を守る為の嘘等に就いては、これは仕方無しと考える。
自分は渇いている。そう、渇いている。砂漠の真中で干からびた蠍の様に、渇いている。
俺はその薔薇を見て微笑んだ。何の笑みか、判らない。しかし微笑んで、
「綺麗な、紫色をした薔薇だ。」
その後に苦笑した。
その人は言う。
「紫色の薔薇は、花言葉で哀愁を示すのですってね。」
自分ははっとして、彼女の瞳の奥を見た。
嗚呼、彼女が、その哀愁の薔薇を自分に送った意味を、自分は解してしまった。
自分はアルコールを飲んで、
「やっ、これは、紫色をした薔薇ですね。」
そう言って、不細工な笑顔で以て、微笑み続けた。