劣等感

□黒色
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 業火に身を焼かれる者の如くのたうちまわりまして、然してその業火らしいそれを鎮火致したく、私は一つの球と成って坂を転がりました。
 私に義がありますと致しますれば、その回転に因りて身が剥げ肉がもげたる内情を痛感致して居りましたと言ふ事です。
 斯くして被害者の御面を被りたる私は、彼方側を敬遠致して居りましたが、おや、黒色の大空、黒色の太陽、黒色の三日月、黒色の星屑、黒色の森林、黒色の風、…いやはや、此処は彼方側の景色ではありますまいか。
 彼方側。嗚呼、今と成りましては、此方側と申し上げました方が、適当の御様子で御座ります。



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