劣等感

□近眼になった僕はいずこへ
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 桜の舞い散る季節に、僕は君を見つめていました。
 君は高貴で、可憐で、美しく、繊細でした。
 僕は君をただ見つめていました。その大きい澄んだ目を、僕は何時でも見つめていたのです。
 僕は、君を見つめていて幸福を感じた時分、君には言いませんでしたけれども、こう思ったのです。
 君を見つめている事が出来るのであれば、何も要らない。嗚呼、それは文字通り、お金も名誉も、何も要らなかったのです。
 しかし、壊れないものは、無いのですね。どうしたって、始まったものは、終わってしまうのですね。
 僕は君を見つめ過ぎて、目を悪くしました。
 それと同じ様にして、君を愛し過ぎて、愛せなくなりました。
 この問題を解決する能力を、どうやら僕は所有して居りません。
 季節外れの台風に、傘を壊され、びしょ濡れにせられ、そうして、僕は台風に、こう言いました。
 僕を、何処かへ連れ去って下さい。

 台風は僕を無視して、遠くへ行きました。



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