劣等感

□明日と蜘蛛と
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 明日というものは、嗚呼、あたしにとって、一面が海の、その真中に投げ込まれる様なものだ。周りには文字通り何も無く、水平線だけが息をしている。
 泳ぐ事の出来ないあたしは、溺れるしか他は無い。けれども、もし遮二無二泳いで、岸に辿り着いたとしたら?その可能性も、無くは無いのでしょう。
 明日というものは、嗚呼、あたしにとって、一面が地面の、その真上から放り出される様なものだ。周りには文字通り何も無く、壮大とも言う事の出来る地面だけが息をしている。
 上空四千メートルからパラシュートも装備せず、真っ逆さまに墜ちるあたしは、ぐちゃぐちゃになる以外に他は無い。けれども、どうにかして、無事に着地出来たとしたら?その可能性も、無くは無いのでしょう。

 あたしの部屋に、小さい蜘蛛が現れました。出来る事なら殺したくない。けれども、衛生上の問題からして、殺さなければならない。
 窓を開けてみた。どうせ、蜘蛛は出て行かない。それでも、窓を開けてみた。
 蜘蛛はあたしが窓を開けるのを待っていたかの様に、外へ出た。
 あんまり可笑しくて、あたしは、涙した。



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