劣等感

□不幸の上に咲いた七色の虹
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学校では一時間目が終了し、合間の休憩時間に鈴達と飲み物を買いに、中庭の中央に在る食堂へ向かいました。私はこの間、極端に口数が減りましたが、なるべく笑顔を保つようにして居りました。然し、鈴が私の目の奥を見詰め、ずばり私の零れ落としたい涙を見破り、大丈夫?と聞き、私は大丈夫だよ、と涙を堪えて言いましたが、鈴は、話なら聞いてあげるよ、と親身に言ってくれました。けれど、休憩時間の終了がチャイムとして告げられ、私はもう戻らないと、と言って教室に戻ろうとしました。それでも鈴は、さぼろう!と言い、私は自暴自棄に、そうだね、と笑い、産まれて初めて学校の授業をさぼりました。
鈴と私は、人目に付き難い誰も使わない階段を発見し、其処で舞の話をしました。私は有りのままを涙ながらに話し、舞との別離で発症した後遺症は途轍も無く凄まじいと、悲哀と恐怖と涙に溺れました。
話は二時間目の授業が終るまで続き、私達はそろそろ教室へ戻る事にし、階段を降りました。すると鈴は、私の手を握り、そのまま私を連れて歩くのでした。私は衝撃的で、呆然と鈴に着いて行き、そしてお互いの教室に戻りました。
失恋の痛みに呆然としていた私は、鈴のその奇怪とも言える行動の所為で更に呆然とし、教師の声も、もう何も聞こえませんでした。時間は無意味に過ぎ去り、お昼休みが終った頃、鈴が私のいる教室へやって来ました。
鈴には、歳が十以上も離れた弟がいまして、まだ幼い子供でした。その子の面倒を一緒に見てくれと頼まれ、私は仕方無く、いいえ、矢張り自暴自棄でそれを了承し、私達は五時間目と六時間目の授業を放棄し、鈴の家に行きました。そして、生意気な子供が居て、面倒等は見たく有りませんでしたが、まぁそれでも鈴の部屋で弟の面倒を適当に見ながら過ごしました。
まるで一瞬でした。その出来事に辿り着くまでは、正に一瞬でした。

初めに言って置きましょう。
私は軽薄です。天邪鬼です。そして何事も一貫してやり通す事が出来ない様で、意思薄弱とさえ言っても過言では無いでしょう。愛情を芥箱に捨てて、意気揚々と生きる事が出来て仕舞う、哀れな生物でした。
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