魔法導
□愛しいあの子へ。
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「シン、シン。手が止まってますよ。」
「・・・あぁ、悪い。今やるから。」
またか、とジャーファルはひっそりと眉根を寄せた。
このところ、シンの様子がおかしい。
些細な感覚だったそれは、今やはっきりとジャーファルの全身にひしひしと伝わってくる。
(私が何かしたのだろうか。)
見られている、と彼自身そう思う。
否、見られると言うより見つめられるが正しいだろうか。
事あるごとにシンドバッドはジャーファルの頭の天辺から爪先まで、これでもかというほどに見つめてくる。
「・・・シン」
「何だ、ジャーファル」
視線の圧迫感に耐えかねたジャーファルはしばしの沈黙を交え、彼に問う。
「このところ・・・ずっと私を見ているようですが、何かあるのですか?」
「・・・気づいていたか」
「気づきますよ、あれ程じろじろと見られては誰でも気づきます。」
気づいていないとでも思っていたのだろうか。
シンドバッドは心底驚いたとばかりに頬杖から顔を上げる。
その意外そうな顔を見るや否や、ジャーファルは即座に顔を歪めた。
「何を驚いているんです、私だって気づかないような馬鹿ではないんですよ。」
「ん、いやまぁ・・・そうだよなぁ」
ギシリと音を立て、背もたれにもたれ、空を見つめる。
体調が悪いわけではない。
機嫌が悪いわけではない。
ならどうしたというのだ。
シンドバッド、わが王よ。