魔法導

□君の笑顔が、
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隣でぐっすりと眠るアリババの顔を見つめながら、カシムは考える。


――本当にコイツは、俺達についてきたことを後悔してねぇのか?


流石のカシムでも不安になる。
毎夜毎夜、アリババが眠っては自分はその横で考える。寝もせずに、じっと。


「っぅ...」


と、眠っていたアリババが小さく呻き、眉根を寄せる。
嫌な夢でも見ているのか、小さな呻きは続き、カシムの耳に届いた。


「・・・おい、大丈夫かよ」


じっとりと、アリババの首筋が汗ばんでいる。
掛けられている布団代わりの薄い布がするりとアリババの肩から落ち、白い腕がむき出しになる。


「・・・なぁ、アリババよぉ」


落ちた布をアリババの体に掛けなおし、カシムはそっと声を発する。


「お前、昔からそうだったよな。自分のことは通すのに、その癖譲ったりとかさ、あんじゃねぇの?」


視線を月に向け、カシムの声は夜の冷たい空気を振るわせた。
あまりに静かで、自分の声が大きすぎるのではと錯覚しそうになる。


「だからって俺はお前が苦しむとこなんか見たくねぇんだよ、無理はしなくていい。お前には笑ってててほしい」


アリババが寝返りを打ち、カシムに背を向ける形になる。眉間の皺はすっかり打ち消えていた。


「・・・俺だってよ、お前が大事なんだよ。お前の笑顔が、大事なんだよ」


最後にぽんぽん、とアリババの背を軽く叩き、カシムもその横にごろりと寝転がる。


――朝になったら、また始まるんだ。


アリババの望まない世界が。
アリババの望まない、人々の苦しむ世界が。


――ならいっそのこと・・・


このまま夜が明けなければいい。
永遠に、この夜が続けばいい。


どうか、苦しむことのないように。
その横で、アリババがクスリと小さく微笑む音がした。


fin.
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