魔法導
□X
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予算が厳しいと思われていたシンドバッドの結婚式も翌日に控えたある夜。
ジャーファルはいつものように白羊塔で黙々と執務をこなしていた。
鐘が鳴るまでは執務を、そして次の鐘でシンドバッドへ報告を。
(そろそろ、かな)
ジャーファルがそう思ったのとちょうど重なり、大鐘が鳴った。
座り続けによる軽い腰の痛みを抱えつつ、ジャーファルはまとめた報告書を手に、王のもとへ向かう。
明日からは違う人のものとなるシンドバッド。
じゃぁ、こんな風に報告をするのも最後だと?
(・・・違うな)
ジャーファルは小さくかぶりを振った。
だとしても、今までの関係に変わりはない。
ただ、シンドバッドが少し幸せになるだけだ。
ただ、自分が少し心に負荷を負うようになるだけだ。
なんてことはない。
今までと何も変わらないじゃないか。
ジャーファルは自嘲的な笑みを浮かべながら、歩みを速めた。