魔法導
□Y
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―目を開けば、ただただ濃紺がジャーファルの視界を埋め尽くしていた。
重たい身体を起こせば、ふらりと一瞬よろめいてしまう。
月が見えないあたり、今は明け方前なのだろうか。
「ん...ふわぁ...」
気が緩んでいたからか、小さく欠伸が漏れた。
起きてしまったのならと、もう一度寝台に身を横たわらせる。
ここ数時間の記憶が飛んでいるのは酒を煽りすぎたからか。
おそらく倒れてから数時間はたっているというのに、未だ視界がはっきりしない。
それに、昨日は...
「ぅ、...あー...」
ため息にも似た擬音が思わず漏れる。
思い起こそうと必死になったせいか、逆に目はさえてしまった。
よくよく見れば、まだ自分の身体は見慣れた官服に包まれたままだ。
しわくちゃになった官服を脱ぎ、新たなそれに腕を通す。
明け方まではすることは無いだろうと思い、被ろうとして思いとどまったクーフィーヤを見つめてみる。
深緑のそれは、早朝の風にはためいてジャーファルの手をくすぐった。