short

□離ればなれ、
1ページ/2ページ



冬の日。マフラーと手袋をして、私は体育館横のベンチに座っていた。
大好きな緑間君の部活が終わるのを一人で待っていた。

寒いなあ・・・。明日は雪かなあ・・・。
緑間君と、見れるかなあ・・・。

そんなことを考えながら。
すると突然、目の前が真っ暗になった。


「え!?」
「だーれだーっ♪」


緑間君はこんな恥ずかしいことはしない。
だから、たぶん。


「高尾、君?」
「あーーーったりー!」


目の前に明かりが戻り、正面に高尾君がまわってくる。


「ヤッホーー!七瀬ちゃん!」


高尾君はすごくテンションが高い。


「あ、緑間君は」
「真ちゃん?真ちゃんなら、もうすぐー・・・あっ!来たぜ!!真ちゃああん!」


高尾君の視線を追った先に、緑間君が居た。


「しーんちゃーん!彼女がお待ちだぜー!」
「うるさいのだよ!高尾!」


緑間君は不機嫌そうな顔で私たちのところへ来た。彼は私を見て優しく微笑んでから、高尾君に向く。


「高尾。すまないが今日はこいつと帰ることになっている」
「ええ!!真ちゃんひでえよ!俺、初めて勝ったんだぜ!?」


高尾君はひどく落ち込んでしまった。
緑間君、じゃんけん、負けたんだ・・・。


「あ・・・じゃあ、今日じゃなくてもいいよ?高尾君、せっかく勝ったのにもったいないよ」


高尾君は私に賛同せず、緑間君をちらりと見てから、
「まー、今日真ちゃん占い最下位だったもんなー」と言った。

そういえば、最下位だった気がする。でも、それだけでじゃんけんに負けるような緑間君ではないはずだ。


「・・・今日は、ラッキーアイテムが見つからなくてだな・・・」


めがねを上にあげながら、緑間君は恥ずかしそうに言った。

じゃあ、私、すっごいタイミング悪いかも。

緑間君にすごく申し訳ない。


「んじゃあ、俺いくわー。真ちゃん、七瀬ちゃん、じゃあな!」


高尾君はすごく人が良い。だから、緑間君も好んで一緒にいるのかもしれない。


「それで、話とは何なのだよ」


緑間君が私の隣にゆっくりと座った。
すごく、すごく言いにくくなってしまった。


「・・・あの・・・えっと・・・私っ・・・緑間君が好きだよ。すっごい、好きだよ」


緑間君の顔が見れない。彼を見てしまったら、言えなくなる。言わなければならないことが、言えなくなってしまう。


「七瀬?」
「・・・私・・・。ね。もう・・・緑間君といられないの」


そう言葉を吐き出した途端、涙が止まらなくなった。
心臓が押しつぶされそうだ。


「・・・どういうことなのだよ」


緑間君が怒っていることは、声だけでわかった。


「私。引っ越すことになったの・・・・・・。嫌だって、言ったんだけど」


泣きじゃくる私をそっと抱き締めてくれた。温かくて、温かくて。離れたくない気持ちがますます強くなった。


「七瀬。離れるのは、寂しい。・・・だが、会いに行くのだよ。俺が、七瀬に会いに行く」
「・・・緑間君・・・」
「だから!!別れる・・・のは、なしなのだよ」


顔を上げて緑間君を見ると、顔を紅く染めて、私と目を合わせようとしない。


「・・・・・・緑間君。ありがとう。大好き」


今度は緑間君から私に抱きついた。




もう、離ればなれでも寂しくないよ。
あなたが強い言葉をくれたから。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ