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□泣き虫清志、
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WC。洛山高校と対戦した秀徳高校は敗戦した。
「宮地君、おつかれさま」
敗戦を味わい、気を落としているであろう宮地君の元へ向かう。
「おお。見に来てたのか」
宮地君は驚いたように目を見開いた。私はすぐに気がついた。宮地君の目元が赤い事に。
あーあ。やっぱり。
「宮地君、この後時間ある?」
「は?・・・まー無くはねぇけど」
まだ敗戦の空気に浸っているチームメイトを横目に見てから、宮地君はそう答えた。
「ん。わかった。外にいるから来てね」
選手控え室を出て、すぐ外にある椅子に座った。
宮地君。頑張ってたからな。私も泣きそうだったけど、涙は出なかった。それよりも、宮地君が泣いてしまうんじゃないかって、ただただ心配だった。宮地君を見たら、案の定泣いてしまっていたけど、でも・・・・・・。
ちゃんと先輩≠竄チてたなあ。
「泣き虫清志は卒業かな」
「あ?」
そう呟いたと同時に宮地君が現れて、笑いそうになった。
「ナイスタイミングですね。宮地先っ輩!」
宮地君の手を握って体育館から連れ出す。
「何だよ。先輩って。つーか、泣き虫じゃねえよ」
「小さい頃は泣き虫だったでしょー」
2人で並んでゆっくりと歩いた。
そろそろ、泣き虫清志を楽にしてあげないといけない。
「なあ、どこ向かってんだよ」
しばたく歩いた頃、宮地君がそう問いかけてきた。私は「内緒」とだけ答える。
そして宮地君と私は小さな公園に着く。
「さー。宮地君と思い出話でもしようか。ねっ」
宮地君をベンチに座らせて、私は宮地君の目の前に立つ。
宮地君は怪訝そうな顔で私を見てくるが、そんなのは気にしない。
「宮地君。頑張ってたよ。ずっとずっと頑張ってた。1年生2人組だって、楽しそうに見てたじゃない。宮地君は偉いよ」
私の言葉1つ1つを、宮地君は黙ったまま聞いている。
「だから、宮地君には3年間頑張ったで賞をあげなくちゃ」
私が笑うと、宮地君も笑った。
「何が頑張ったで賞だよ・・・」
宮地君は立ち上がって、ゆっくりと私を抱き寄せた。
「今日の試「悔しいよ。悔しいに決まってんじゃん。もっと、あいつらとバスケやりてえ・・・」
宮地君が震えている。私は宮地君の背中をポンポンと叩く。
「あいつらと・・・バスケすんのが・・・すげえ楽しかった」
声も震えて、体も震えてる。泣いていた。
「宮地君。えらかった。宮地君はちゃんと先輩だったよ。かっこよかった」
私の言葉で、抱き締める腕の力がいっそう強くなった。
「もう少し。このままで居させてくんねえ?」
「いいよ」
いっぱい、いっぱい泣けば良いよ。
気が済むまで泣けばいいよ。
泣き虫清志はまだ卒業できそうに無いけどね笑