じょじょ

□魂の錬度
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言いたくは無かったんだが。

「ムッシュ、ポルナレフ!」

殺し屋相手とはいえ、一般人に対して堂々とスタンドを使う目の前の男に、私は警戒するよう声を張り上げる。

時々襲ってくる人形のようなスタンドを疎かにして、アマチュアの殺し屋を相手取るなんて!



<魂の錬度>



ぬるい、ぬる過ぎる!
毎回毎回どうしてこうも!荒が目立つのか!

目先にちらつく銀の髪の巨体を見ながら、ミードは苛々と唇を噛む。

シンガポールのホテルに入る時までの短い間だが、見ていて気づいた。
このポルナレフはカノ人に比べると驕りが強すぎるのだ。

若さゆえの自信と言えば良いかもしれない。しかし、カノ人が望む先へ導けというならそれでは足りない。

そして、ミードは、

「ポルナレフ、お部屋を共にしても?」

「なになに!ミードちゃんったら大胆なんだからー!」

少しばかり残っていた、最後のプライドを捨てた。

シンガポールで9階の部屋に入った時の話を聞いたことがある。
敵は冷蔵庫から現れて、呪いの力でカノ人にいくつもの傷を負わせたのだと。

正直言って先がわかっているから出来る行動だろう。
っていうか本来なら絶対無理なことだと思うんだけれど、今のポルナレフに自分の甘さを認識させる為の土台として使うのには正直言って丁度いい相手だ。

「出て来い!!」

そう言って、冷蔵庫へ向かうポルナレフの姿を扉の影の中から見送って、ミードはそっと自身の影を床に這わした。

やっぱりこんな反則は好きじゃないのだけど。

現れた呪いのデーボ、わけもわからず戦うにつれポルナレフがベットに縛られたのを確認し、私は影から立ち上がる。

これは先の貴方から受け継いだ経験であり、先に必要な魂だ、故に、私が貴方に教えるのは野暮かもしれない!

それでも!!必要だからやるだけだ!

起き上がるとほぼ同時、体の中に潜ませたスタンドと動作を合わせて、敵のスタンドらしい人形をミードは殴りつけたッ!
言い放つ一言には余裕がありありと浮かんでいる!

「おそまつですね…ムッシュ」

バーン!と、効果音でも入れてしまおうか。
いかにも格好つけて現れた私を見て嬉しそうに声を上げたポルナレフに、思わず笑顔を向けたくなるのをぐっと堪える。
血の量からして怪我を心配したい所だけど、堪えるんだ私。

「た、たすかったぁ!」

「ええ、それはよかった。今の貴方では出来ない事を見せてあげますのでどうぞそのまま観戦でもしていて下さいな」

あえて厳しく、お手本を見せるとしよう。

「ナンダテメエ!」

小さい人形が飛び掛ってくる、スピードはチャリオッツより遅いのだし、どうということは無い筈なのになんでそんなに苦戦しているのか…。

「気をつけろミード!そいつは!」

叫ぶポルナレフの声を聞きながら私は考える。
やはり手本として見せるなら剣を使ったほうがいいかなぁ、と。

「テメエモアシヲツブシテヤルヨオ!」

「ぶつぶつ煩い人形」

影‐シャドゥ‐によってミードが具現化したのは、チャリオッツの持つ剣によく似た長さの西洋剣ッ!

「ケッケケケ!テメエ!ソンナスピードモナイスタンドデ剣ダァ?バッカジャネエノカ!!」

確かに、私のスタンドは剣を扱えない。
なんたってカモノハシだ、動きものろい。
装備品なんてまるで意味を持たないだろう。

敵は壁や調度品を駆け回りながら、こちらを斬る隙を伺っている。
右へ、上へと撹乱しているつもりか。
そこに影がある以上お前の動き程度は完璧に【見えている】っていうのに、ご苦労なことだ。

「トッタゼ!!」

私の背後で壁を蹴った人形、空中に身を投げてこちらに飛び掛ってくるその動作ッ!

そこに隙がある!
右手で構えた剣で一直線に人形とその先の壁とを、私みずから縫いとめるッ!!

「お粗末な動きです!」

「グエッ!?」

そして、戦いはこれで終わりだ。

深く刺さった影の剣を抜こうと悶えている人形の中で、影の剣の形を変えてその所作を封じ込める。

「ポルナレフ、私の戦いを見てましたよね?」

「お、おぅ」

引きつった顔をしたポルナレフは、いつの間にかチャリオッツでベット下から脱出していたようだ。

「私、貴方の戦い方を見ていると、隙が多すぎて苛々するんです。ですので」

心の中で思い起こす、カノ人の所作、立ち回り、それを貴方に会得してもらうまで、

「少し私と特訓しましょうか?」

貴方に厳しくする覚悟は出来ています!
 

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