ごちゃごちゃ
□裏話(名前編)
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とあるニューヨークの裏路地。
独りの女が薬に酔い、孤独に酔った後犯した罪は、いずれ、娘が負うべき罪になるだろう。
彼女は自らの誘うまま、誘われるままに毒蛾のような粉を撒き散らし、下肢に色ずく夢を購った。
男は言う。
「もうすぐ二月だ。君みたいな奴はもう少し厄を払って貰ったほうがいいんじゃないか」
女はくすりと笑って男に続きを促す。
「いやね、厄だなんて。ね、貴方のお国の話をもっと聞きたいわ?」
男が眉を顰めて女を睨んだ。
「君に話したところで理解は出来ないだろう。大体、二度も会うつもりは無い」
「ひどい男」
「君に言われる筋合いはないな」
「あら、そ」
その後の話はもはや誰も語らない。
女は娘を産み、男はなにもかもを忘れて何処かの国へと消えた。
娘は初めからその全てを知っていた。
祖母や祖父に弾かれ、母は夢に縋る為になんども彼女に話して聞かせる、一夜物語。
そして彼女は大人になり、母は語ることにも待つことにも飽きて本当の恋をした。
今では誰も紡ぐことはない話の冒頭は、
「ねぇ、フェーブル。二月産まれの可愛い私の娘。貴方のお父さんはね…」