08/03の日記

22:30
7:米世界で暮らしてみよう
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起きて、朝に起きたんだから、学校に行かないといけない。
そう思ったのに、目覚めた場所は俺の部屋じゃあ無かった。

変だな。
じゃあ、此処はどこだ?と、辺りを見ても見慣れぬ物ばかり。

まず、青い、何かの鉱物で出来てるらしい壁と床が見えた。
続く窓の外には一面の星空が見える。
・・・スクリーン?

被っていた毛布を剥いで起き上がるが、俺は未だに黒のベストとシャツを着ている。

夢から起きたつもりだったのに、まだ夢の中とはね。
こんな事は初めてだ。

気持ちを落ち着かせようと深呼吸をして、おっかなビックリ、床に置かれた靴を履いてドアに向かう。

少し寒いな。
なんて考えながら。
背伸びをした。

僕はドアノブのない扉へ手を翳して開けと念じ、いつもの通りに動かして。
ついでに、宙へと浮かんでみたり。

うん、出来る出来る。
やっぱりまだ夢の中か。

一人で納得する。

と同時にゲンナリする。

またバットマンとか言う真っ黒なマント野郎が出るんだろうか?
うわぁ、嫌だ。

色々聞いてる噂と、店での雰囲気で完璧に苦手意識が出来上がり、俺の中でバットマンという単語が既にレッドカード扱いになっているらしい。

あぁ、気だるい。

気だるいので、ドアを閉めて元居たベッドへ引き返す。

ふと、いま何を持っているんだろうかとポケットを探った。店の小さなサイコロが8つと、キャラメルが一つ。

サイコロの一つを手の内で転がして、後はポケットへ戻した。

ぼそり、しょうもない事を考え付いて、呟く。


「1か2ならバットマンが自分のマントを踏んで転ぶ。3か4ならバットマンが足の小指をぶつける。5か6ならバットマンが腹をくだす・・・」

だからどうというわけではないが、所謂八つ当たり。

どうでも良いことばかりを指先で摘まんだダイスに込めて、床に投げる。

roll..4!!


「ぷぎゃー!机の角に足の小指ぶつけてしまえぃ」

まぁ、本当にそうなって欲しいならダイスなんて物は使わないで実行するんだけど。

これはただの一人遊びで、次寝る時間を待っているだけの暇潰し。
研究所でもよくやったやつだ。

「もう一個行ってみるか」
構えるダイス。

だが、誰に聞くわけでも無かった言葉に、誰かが返事をした。


「よせ」


声と同時に扉から見えた姿の第一印象は、え・・・ピッコロ大魔王?だった。

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18:40
6:米世界で暮らしてみよう
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(急展開します)



安心出来る仲間や家族と、楽しく人生を過ごせていれば、それが最高だと思っているんだ。

夢だろうと、僕は変わらない。


安心を得るために必要な物はなんだろうか?

簡単には言えないが、社会で生きていく上ではお金が無いと何も出来ないのは確かだった。

いつも通りなカジノ暮らしで、ファミリーが安心するためにお金を稼ぐ。

ステッキという男を柱にして集まる十数人はまさに家族そのものだった。

暮らしていくとわかる、この街の暗さ。

漫画のような悪役と英雄が集まる可笑しな夢だ。

それも長く見続けると、・・・まるで現実のような気がしてしまう。

だから僕は、少しばかり家族を贔屓したんだ。

先ずはお金、次に保険や資格、家族の家族が病気なら必ず治るよう意識したし、新しい事業を始める時は絶対成功するように夢を操作した。

それが何の事業か?
僕はお菓子を作る会社だって聞いてたよ。
次に、おもちゃ屋。
その次には遊園地。

これは夢だ。
僕の意識を外れるはずはない。

だから、僕とステッキのカジノにマントを着た男が乗り込んで来た時、僕は何が起こったのかすらわからなかったんだ。

「お前の悪巧みも此れまでだ!」

「怯むな!俺達は絶対成功する!」

一体なにが起こったんだ?

僕はステッキに目配せしたが、彼はポカンとした表情のまま、配るはずだったカードを持っていた。

僕とステッキ以外の家族はあっという間にマントの男に捕まり、警察に連行されていく。

残ったのは廃屋と見紛うような店と、マントの男とステッキと僕だ。

黒いマントを着た、奇妙なヘルメットの男が言う。

「一体どうやってJLの目を掻い潜った?」

JL?

「ステッキ、彼は?」

「バットマンだ」

僕を庇うように立ったステッキが、バットマンに胸ぐらを捕まれ揺さぶられる。

「僅か1ヶ月でお前の組織が稼いだ金額は異常だ、どうやった!」

「ふ、普通にカジノでやっていただけだ」

「そんな言い訳が通じると思っているのか!!」

「本当なんだ!」

「ならば何故、今までジャスティスリーグに見つからなかった!!衛星にも、視界にも、仲間のテレパシーにすらお前達の企みはまるで引っ掛からなかった!!私が物流の流れを調べない限り、お前の組織は成功し続けたかもしれない!!」

「まさかそんな!」

「何も知らないなどあり得ない、何か、切っ掛けがあるはずだ」

ステッキは肩を押さえて低く唸っている。

「麻薬、銃の取り扱い、科学兵器の研究所!」

バットマンは力を緩めない。
ただ、彼が怒っているのが伝わってくる。

「お前の組織が何人殺したか知っているか!」

「やめてくれ・・・」

痛みに眉をしかめながら、ステッキは弱く小さな声で言った。

「・・・子供がいるんだ」

その言葉を聞くまで、僕はずっと部屋の隅に立っていた。
こんな夢は嫌だ。

「ステッキ、」
「いい子だ。お前は店の金を使って学校に行け、賭け事ばかりが才能じゃない、わかるか?」

警察に行くのか?

「悪党をやったんだ、当然だろう?」

家族はどうする?
ファミリーじゃない、やっと出来た家族が待ってるだろ?
美人の嫁と、可愛い娘。

「あぁ、暫く会えなくなるのは寂しいな」

真っ直ぐに、俯くステッキの目を僕は見た。
彼は夢の中の住人だ、現実には居ない。
僕は夢の中の彼が大好きだ。

僕は考える。

今日のこの夢を悪夢で終わらすのと、此れからの夢を悪夢にするのと、どっちか。

別に構わないってか、いや、そんなシリアスか?

僕はデットプールを思い出した。
そういや、あいつはこの世界は漫画の中だって言っている。

僕にとっては夢の中だ。

デットプールのように?
・・・御免だね。


「バットマン!」

「・・・なんだ」

子供にマントを踏まれた男が、感情を見せない声で言う。

僕は決めた。

バットマンは目を覚まさないといけない、と。

ステッキも、僕も。

夢の中で夢を見たなんて、変な話だけど、僕の夢なら簡単だ。

合わさったマスク越しの目を見つめて、エスパーを使う。

「これは夢だよ、バットマン」

それでやり直しが出来る。バットマンは忘れて、僕はまた夢を好きなように操れる。


「・・・すまないが、何を言っているのかわからないな」


あれ?


「成る程、この子供がエスパーだったのか」


ぷすり、と

腕に針が刺さる感触と共に、僕の視界が暗転した。

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10:07
5.5:米世界で暮らしてみよう
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Side [stick]




煌めく橙色の照明の元、金の硬貨と熱狂した人々が行き交う幾つもの卓上。

バニーガール達が薄いタイツで曲を踊れば、酒の無くなったグラスにお札や硬貨を入れたボーイが客の間を抜けて消える。

黒いカーテンを引かれた先に消えた金を集計すれば、今やゴッサムの1ヶ月の電気代くらいにはなるだろう。

ステッキと名乗る男が経営する店では、こんな光景が一週間前から続いていた。

店は決して小さくは無い、一介のマフィアがやるにしてはマシなカジノだと彼は思っている。
少なくとも、負けたからって命を取るような事は無いだけ良心的だ。

良い奴からも悪い奴からも、儲けを少しずつ掠め取るだけで銃や麻薬売買を始める余裕も無いが。

ゴッサムのピエロや蝙蝠に怯えつつ。
そのくせ敵対するほど此方の領分が広く無いから見逃されて続けている、それだけの勢力。

その現状を、ステッキは充分承知している。

悪を気取りながら、今一つ波に乗り出せない灰色具合の生活だと、ステッキはわかってやっている。

それでも路上で何も知らずに死んでいく民間人やホームレスより、ましな暮らしだろう?

総勢十数人の部下に言う、いつものお決まりの文句はゴッサムという街によく似合っていた。

このゴッサムという街で、正義(ヒーロー)と悪(ヴィラン)のどちらにも目をつけられないでいるのは至難の技。

それをやってのけれるから、部下達はこのどうにも冴えない悪党を慕って付いてきているのだ。


ならば、この一週間は?


バランスが狂って来だしたのは、ステッキが子供をカジノに連れて来てからである。

たまたま行った隠れ家、にする予定の改装も済んでいない店に、独りで現れた子供。

賭け事の才能と、銃や剣を持った厳つい男達相手にしても怯まない度胸が気に入って、子供が寝入ったのを幸いと拐って来たのはステッキだ。

もちろん、彼の見込みに間違いは無かった。

「パパ、そろそろ寝る時間なんだけど、問題無いかな?」

黒いカーテンを引いて姿を見せた子供は、言うだけ言った後は早々にソファーへと寝転ぶ。

二人の服装は同じもの。
品よく刈り揃えられた頭髪に、七分袖のシャツに黒のズボンとベスト。

だがカジノに居なければ、何処か良い家の御坊っちゃまのような風体に見える子供にステッキは苦笑した。

「パパじゃねぇよ」

「じゃあ、ファーザー(父さん)」

「結婚もしてないのに瘤付きは御免だな」

「子供より稼げても居ないしね」

「うるせぇ・・・」


そう、ステッキの見込みに間違いは無かった。

子供は僅か3日でこの店一番のディーラーになったし、それに比例して不思議と店の売り上げが伸びまくったのだから。

だから、ステッキは危機を感じている。

ギリギリの綱渡りのバランスが崩れるかもしれない、渡る男が背負った金貨で縄が切れそうな予感を。


「おいガキ」

「ん?なにさ?」

「金を儲けたら、お前はまず何に使う?」


この街じゃ、銀行なんて当てに出来ない。
かといって手元に残すのはもっと不味い。


「取り敢えず保険に入る」

「・・・」

「・・・最もな意見だ」


取り敢えずそこ辺りから始めてみるか。

二日後、ステッキは店の売り上げから従業員全員と店のインテリアに保険を降ろし、少しばかり軽くなった金庫の鍵を付け替えた。

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