Random-Room 2

□一途な思いを持ち続けた少女
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8年間もの長きに渡る時を一途に想い続けてくれた少女、リシアンサス

蒼衣にとっては泣いている女の子に声をかけただけ…という他愛のない行動だった

だが、シアにとってはその行動こそが全てだったようだ

蒼衣「シアちゃんなら、私が声を掛けなくても、誰かが助けてくれたんじゃないかな?」

そんな蒼衣の言葉に神界のプリンセス、シアは何も言わずに抱き付いてくると、溶けてしまいそうになるくらいの甘い声で言った

シア「うぅん…あれは、運命だったんだよ♪私と蒼衣さんの♪」

幼い頃の出会いは確かに偶然だったのかも知れない

だが、もう1つの方は今から考えると、運命ではなく、何か作為的なものもが感じられる

そう、神王ユーストマの…

シアと再会したのは蒼衣が20歳の時だった

シアは16歳でバーベナに行っていたが、夏休みだったらしく、神界に帰っていた

シアがバーベナに来たのは、蒼衣が地球に居る、しかも楓の家の前に住んでいる…と言う情報を得ていたからだ

しかし残念な事に、蒼衣は各世界を旅していたらしく、家には殆ど居なかったらしい

シアが探している事を全く知らない蒼衣は、ユーストマから[頼みがある]と言った呼び出しを受けたので、神界を訪ねた

そこでバッタリ鉢合わせしてしまったのがシア

会うなりいきなり抱き付かれ、泣かれてしまった

シアを慰めながら、ユーストマに用事がある事を告げた蒼衣は、とりあえず家に入れて貰った

ユーストマが帰って来るまで待たせて貰う事にした

その間はシアと色々な話をする事にした

だって、家には何故かシアだけしか居なかったから…

結局ユーストマが帰って来たのは夜遅くで、帰るなり一言…

神王「ウチのシアを貰ってくれねぇか?蒼衣殿」

とりあえず真っ赤な顔をしたシアから、イスが凄い勢いでぶん投げられたのは言うまでもなかった

怒りと照れの一撃ですね

わかります

実を言うと、ユーストマは蒼衣とシアを二人っきりにさせて、魔法で覗き見をしていたのである

何故か魔界から…

当然蒼衣はその覗き見を知っていたので、ユーストマとフォーベイシにオシオキをするのだが、それは置いておこう…

ユーストマの問に答えを出すのは簡単だが、シアの本当の気持ちを知りたかったので、バーベナを卒業し、それから本格的に付き合う事にした

付き合って2年後、蒼衣はシアの気持ちが本物だと理解したので、神界で結婚式を挙げ、1年が過ぎた頃には子供が出来ていた

シア「えへへ♪所で蒼衣さん♪私達の子供の名前は決まった?」

だから今、シアのお腹の中には愛の結晶である子供が居る

蒼衣「まだ予定日でもないし、急ぐ必要はないんじゃないかな?」

シア「ん〜…それもそうだね…でもぉ〜、早く決めないとお父さんが勝手に決めそうッス…」

これは有り得る…

何せ孫が出来たと知らせた次の日には、ベビー用品が神界、魔界、地球から全て消え去っていたのだから…

蒼衣「子供の名前を決めるのは親である私とシアちゃんだよ♪だから親父殿には絶対に譲らないよ」

シア「カッコイイ♪////」

蒼衣はシアに負担がかからないように優しく抱き締めると、綺麗な長い髪を撫でた

蒼衣「これからはシアちゃんだけじゃなく、産まれてくる私とシアちゃんの子供の為に、色々と頑張るよ♪だからずっと、私の傍に居てくれるかな?」

シアの耳元に顔を近付けて小声で囁くと、シアは幸せそうに頬を赤く染めて蒼衣を見上げた

シア「あ、当たり前じゃない!私にはもう蒼衣さんしか見えないの…蒼衣さんが居てくれるだけで私はどんな時も幸せだよ♪」

微笑んだシアは眩しかった

蒼衣「シアちゃん…」

そんなシアが愛しく、とても可愛く感じた

だから蒼衣は、そっとシアの顎に指を添えて上を向かせ、唇を重ねた

シア「んっ♪蒼衣さん、大好き♪」

シアの唇を離した蒼衣は徐に襖に目を向けた

何やら丸い穴が2つあるのは気のせいだろうか…?

蒼衣「さて、親父殿?そこで何をしているかな?」

ユーストマ「ギクッ!?」

襖が話すハズがない

襖が汗を流すハズがない

丸い穴から中を窺っていたのは、シアの父親

現在は蒼衣に神王の座を譲った元神王のユーストマだった

ユーストマ「い、いやな、俺は蒼衣殿とシアの邪魔をしねぇように部屋の外から様子を窺っていただけで……」

シア「お、お父さんの……」

ユーストマ「ま、待てっ!今は腹ん中に孫が…っ!?」

シア「バカァァーーっ!!」

いつまで経っても変わらない父と娘のスキンシップ…

と言うべきなのだろうか?

シアのチェアーアタックがユーストマの後頭部に炸裂した

かなり嫌な音を立てて…

蒼衣「シアちゃん、親父殿…息してないよ」

白眼でピクリともしないユーストマを見て、マイクロ程度だが心配してあげる蒼衣

するとシアは溜め息を吐きながらユーストマの耳元で何かを囁いた

ユーストマ「ちょっ、ちょっと待ったッ!!シ、シア、そいつは酷ってもんだぞッ!?たまにならっ?1年に1回だけでもッ!」

シアが何を言ったのかは大体の想像は出来る

そんな二人を眺めながら蒼衣は口を開く

蒼衣「シアちゃん、親父殿、子供の名前を決めたよ」

シア「え?本当?どんな名前?」

ユーストマ「そいつは俺も聞きてぇなぁ♪それで、どんなでぃ?」

蒼衣「新しい家族の名前はアイシアにしようと思うんだ♪」

シアは名前を聞いて直ぐに理解した

蒼衣の[ア]と[イ]リシアンサスの愛称[シア]が含まれている事に…

これから産まれてくる家族を、私達は心待ちにしている

アイシア、早く君をこの腕に抱かせておくれ

アイシアが産まれて泣く時、私達は必ず笑顔で迎えるよ

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