Random-Room 1

□ファーストキス
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世界に一時の平和が訪れたある日の事

蒼衣とルッキーニは、二人で買い物に出掛けた

本屋での事…

ルッキーニ「んにぃ〜…うじゅぅ〜…」

ルッキーニが緑色の背表紙に手を伸ばしている

棚の上の方だから懸命に背伸びをしても、指先が届くか届かないかで精一杯のようだ

蒼衣「はい、ルッキーニちゃん」

蒼衣は届かない事がわかっているので、ルッキーニの代わりにその本を取って、手渡した

ルッキーニ「…ありがと」

ルッキーニにしては珍しい

何故か少々不機嫌そうにお礼を言ったのだ

次のお店、下着屋にて…

蒼衣「ルッキーニちゃん、ブラ買うの?」

ルッキーニ「うん」

蒼衣「まだ必要ないんじゃないかな?」

淑女に対して失礼な事をスパッと言い放つ蒼衣

しかし事実上、ルッキーニの胸の大きさを見ると…

悲しい…

見るも無惨…

触ってもつまらない…

いや、そんな事はないな

とまぁ、お世辞にも言えないぐらいに、真っ平らな胸をしている

ルッキーニ「あたしは成長期がまだきてないだけっ!ペリーヌなんかと深刻さが違うのっ!」

ルッキーニが益々不機嫌な顔になり、へそを曲げてしまった

下着屋の件をお詫びしようと思い、喫茶店に入った

蒼衣「さっきはゴメンね…ルッキーニちゃんも女の子だし、色々と気にする年頃だよね…」

謝るもルッキーニは不機嫌面のままだった

蒼衣「ここの店のメニューで、好きなもの頼んで良いよ♪」

そう言うと、ルッキーニはメニューを凝視する

ルッキーニ「……お兄ちゃんは何するの?」

蒼衣「んー、そうだね、コーヒーかな、ブラックの」

ルッキーニ「……じゃあ、あたしも同じでいい」

蒼衣「ルッキーニちゃんの好きなモノを頼んでいいんだよ♪あ、これはどう?期間限定のマンゴー」

ルッキーニ「お兄ちゃんのバカァーーッ!!」

そう叫んだルッキーニは席を立ち、そのまま店から出て行ってしまった

しかしルッキーニはすぐ捕まった

蒼衣の速さから逃げ切れるワケがない

ルッキーニは手を振りほどこうと暴れるが、簡単に離すワケにはいかない

蒼衣「落ち着いてルッキーニちゃん、場所考えてよ」

もし蒼衣が今手を離すと、ルッキーニはゴロゴロと階段を転げ落ちてしまう

今の状況を理解したのか、ルッキーニは暴れるのをやめてくれた

ルッキーニ「あたしもう12才だよ!いつまでも子供じゃないもんっ!」

だが、やはり虫の居所が悪く、不満を抱いていた全容を暴露しだす

ルッキーニ「少尉なんだよっ!偉いんだよっ!何で子供扱いすんのっ!?」

蒼衣「ルッキーニちゃんが妹みたいに思えて、ついカラカッタり、カマッテあげたくなっちゃうんだ」

半分は本音で、もう半分、特に後半は好きだからカマッテあげたくなる

蒼衣「ルッキーニちゃんがそんなに怒るとは思ってなくて…ゴメンね」

ルッキーニは不満そうな顔をして、俯いてしまった

今にも泣き出しそうだ

蒼衣「もう子供扱いしないから、何か埋め合わせをさせてくれるかな?」

ルッキーニ「じゃあ………ス……て…」

ルッキーニが俯いたままでボソッと呟いた

蒼衣「え?」

予想とは異なる返答に、思わず聞き返してしまった

するとルッキーニは顔を上げ、目をジッと見つめた

そして、さっきと同じ言葉を繰り返す

ルッキーニ「キスさせて」

蒼衣にしては珍しく、ルッキーニの熱い眼差しを受けて、ちょっぴりドキドキしていた

キスと言っても、頬っぺたや額、というわけではない

もちろん今更ダメだなんて言えない

幸いな事に辺りに人はいなかった

ルッキーニの初めては、もう少し後に取っておこうと思ったが、蒼衣の自業自得となった

蒼衣「いいよ」

蒼衣はルッキーニと同じ段まで降り、少し前屈みになった

ルッキーニ「そうじゃないよッ!」

そう言うとルッキーニは階段を一段登った

そしてクルリとルッキーニが振り返ると目線が合う

ルッキーニの目線が、蒼衣の目線と同じ高さになり、凄く不思議な感じがした

ルッキーニ「屈んじゃダメだからね!今のあたしじゃこうする事しか出来ないけど、背だって伸びるし、胸だってきっと大きくなるもん!砂糖もミルクもなしでコーヒーが飲めるようになって、こうやってお兄ちゃんとキスも出来るようになる!だからもう子供扱いしないで……」

言い終わったルッキーニはゆっくりと顔を近付けてくる

チュッとルッキーニの唇が触れた

蒼衣の鼻の頭に…

蒼衣「フフッ…アハハ…」

ルッキーニ「もーお兄ちゃん笑いすぎっ!!」

ルッキーニはケラケラ笑う蒼衣に怒った

でも、もうそれはさっきの怒りとはどこか違うように見えた

ルッキーニなりにどこかスッキリしたんだろう

蒼衣「もう一回する?」

ルッキーニ「……いい」

蒼衣「本当にいいの?」

ルッキーニ「……今はまだいい」

ルッキーニは階段をピョンと一段降りた

ルッキーニ「二人で平らな地面に立って、お兄ちゃんが屈まなくていいくらいにあたしの背が伸びたら、その時は本当にさせてもらうんだからね」

ルッキーニは蒼衣を見上げながら言った

ルッキーニ「それまで待っててね、絶対の絶対だよ」

ルッキーニは何度も絶対と言った

蒼衣は、余り遠くない未来かもしれない…と思った

蒼衣「ルッキーニちゃんも初キスは大切にしといてね?約束だよ♪」

ルッキーニ「約束約束♪」

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