TOV

□お姫さまのヤキモチ
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なんだかモヤモヤします。
ユーリはただ下町の女性と話しているだけなのに。





「わぁ、綺麗な花」

ワゴンいっぱいに積まれている花を目を輝かせてずっとみていた。

すると

「元気だった?」

「まぁ、そこそこな」


ユーリの声?
と知らない女性の声

私の体は声のした方へ動いていた。


そこで見たものは楽しそうに話しているユーリと下町の女性らしき人物。


「二ヶ月ぶりくらい?ちょっと見ないだけなのにまた背伸びた?」

「もう、でかくなんなくてもいいけどな」


ユーリは苦笑いしながらでも楽しそうに話している。



「へぇ、ユーリも色々頑張ってるんだね」

「ん、まあな」

「でも子供の頃からかわらないね、その性格」

「そうかぁ?」


とっても楽しそう・・・
私と話しているよりもずっと。


「あっ、もうこんな時間、バイバイユーリ」

「おう、またな」



あっ、話しが終わった

どうしましょう
ユーリがこっちに来ちゃいます。
あっ、あそこの裏路地あたりが見つからなさそう。

とっさにその裏路地逃げ込む。

ユーリはどうやら行ったみたいだ。


「はぁ、ユーリ楽しそうでした」

それもそうだと私は思った。
私がユーリを帝都いや下町から連れ出してしまったも同然なのだから。

久しぶりに会えた人と話せて楽しくない訳がない。

「ユーリは私とここまで旅してきたこと、後悔してないでしょうか・・・」

ポツリと本音が漏れる。
それからだんだんと自分の弱い気持ちが沸き上がってくる。

「私があの時連れていってなんて言わなければ、今頃下町で楽しく過ごして、好きな人もできて・・・」

「ユーリが自分の手を汚すことなんてしなくてもよかった・・・」

「ふっ、うう」


私はもう目から溢れだしてくる涙をおさえることなんてできなかった。

「ユーリ、ごめ、なさい
貴方の時間を、私は奪ってしまいました」

ひとりでポツポツと言葉を並べる。


「それから、あの女性にヤキモチしちゃいました」


「かってに貴方のことを好きになって、かってにヤキモチして」

「私我が儘ですよね」


涙が止まらなくてその場に座り込んでしまう。










「エステル」


聞こえるはずのない声が聞こえた。


「エステル」

やさしくもう一度呼ばれる。



「ユー、リ」

「エステル、ありがとな」


ユーリが何を言っているのかわからなかった。

「何言ってるかわからないって顔してるな」

「当たり前です、だって私ユーリにお礼を言われるようなことしてません」

「いや、それがあるんだよ」

「?」

「エステルがオレのことをたくさん考えてくれたことだよ」

「っ...聞いてたんですか?」

「いや、実際は聞こえたの」

恥ずかしい
ユーリが行ってしまったものだと思っていたから聞かれている思っていなかった。

私がなにも言わずにだまっていたら、ユーリが私の頭に手を置いてきた。

「わっ、ユーリなにするんですか」

「お前が沈んだ顔してるからだよ」

「でもユーリは迷惑だったでしょう?」

「はぁ、オレがそんなに心狭いやつに見える? むしろオレはお前に出会えて嬉しいんだけど」

「だって考えてみろよ、下町育ちのオレとお城に居るお姫さま。本当は会うことすら難しいのに今こうして一緒に旅しているってのは奇跡みたいなもんだろ?」

「だからオレはお前に出会えたことに感謝してんの」


私は先程とは違う意味の涙を流した。
嬉し涙 感激の涙 幸せの涙。
色んな意味が込められた涙を流した。

「ユーリごめんなさい、そしてありがとうございます」

「いや、オレもお前の本音聞けてよかった、お前の本心知ることできたし」

「あっ///」

「エステル顔赤いぞ」

「あぅぅ」

「でもなエステル」

そう言ってユーリは私を抱き締める。

そして耳元で囁いた

「オレもお前が好き」

もう私は何も言えなくてユーリの背中に腕を回した。




End
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