TOV

□これはきっと奇跡だろう
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あれから五年の月日が流れた。

世界から魔導器(ブラスティア)がなくなって五年もたったのだ。



花の町ハルル

「ふぅ、こんなものでしょうか」

つらつらと書いてある自分の文字を見る。
たった今新作の絵本が出来上がったところだ。

体を伸ばしながらふと思いついように呟く。

「あれからもう五年もたつんですね」




星喰みとの戦いから五年。
私は夢であった絵本作家になりハルルで暮らしている。

絵本作家といっても正式に出版したのはたったの一冊だけだが、どうやら町の子供達に絵本を作り読み聞かせをしているほうが自分の性にあっているようだ。

でもだからといって出版しない訳ではない。
今回の新作だって出版するために書いたものだ。

「ふふっ、皆元気でしょうか」


旅が終わってから皆各自のやるべきことのために頑張っている。

もちろん会っていない訳ではないがそんなに頻繁に会っているというわけでもない。

「でも無理もないですよね」

そうそれぞれ頑張っているのだ。

カロルは今や五大ギルドにも匹敵するほどのギルドになった凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)の首領として頑張っている。

ジュディスも凛々の明星の幹部でカロルの補佐もしていて、それでいてなおバウルと共に運び屋もしている。
けれどどちらも両立できているところが流石ジュディスだなぁと私は思う。

リタは持ち前の頭脳で魔導器に代わる新しい装置を開発したり、以前は関わろうともしなかった騎士団とも協力してどうしたら市民がより安全に暮らせるようになるかなどの案などを出しているし

レイブンは騎士とギルドの仲介人で一番重要な役を担っている
もちろんギルドにいることのほうが多いらしいが騎士団のほうにも定期的に顔を出したりするようだ。

レイブン曰く
「頼りになる騎士団長のおかげで騎士団でやることないのよー」
だそうだ。


フレンは騎士団長になり平民出身である自身が騎士団長という立場になれたことをきっかけに貴族も平民もどちらも争うことのない平和な環境を築いている。
だがやはり納得できない人達もいるようだ。

でもフレンは
「仕方のないことですが勝負はこれからですから。これからの私たちの行動で証明していきます」
とフレンらしい発言をしていた。

パティは 海精の牙(セイレーンのキバ)を立て直し他のギルドなどの信頼も取り戻し、主に海の上で活動しているとのこと。
この前パティが遊びに来たとき沢山とれたといって様々な魚介類を分けてもらった。
一週間位魚料理が続いたがどれも新鮮で美味しかったため飽きることがなかった。

それからユーリは

そこまで考えたときふと時計をみると

「いっ、いけません!!
もうこんな時間!」

どうやら随分と考え込んでいたらしい。
先程は四時くらいだったがもう六時近くなっている。

「一週間ぶりに帰ってくるのに私ったら」

バタバタとリビングに行きキッチンへと駆け込む。

「お昼に仕込んでおいてよかったです」

じゃないと彼が帰ってくるまでに間に合わなかった、と心でホッと一息。

仕込んでおいた材料を手際よく調理していき、彼の好物のマーボーカレーの完成。
仕上げにデザートとしてクレープも作る。

「ふぅ、なんとか間に合いました」

時計をみると今は七時ちょっと前

彼が帰ってくる予定時間は七時

とその時

扉が開く音が聞こえ、相次いで聞こえたのは愛しの彼の声。

「エステル、ただいま」

私は急いでリビングを出て彼を出迎える。

「ユーリ、お帰りなさい!」

そう言って彼、ユーリに近寄り頬にキスをする。

彼がハルルへ帰ってくるのはかれこれ一週間ぶりになる。
彼もまた凛々の明星の幹部で他の人よりも難しい依頼をこなしている。

今回も例外ではなくヒピオニア大陸のほうで凶暴な魔物の討伐の依頼をしてきたのである。

「ユーリ怪我とかしてないです?」

私は何よりもそのことが心配だった。

凶暴な魔物とだけあって苦戦をしたことだろう。

あちこち調べる私にユーリは苦笑をして。

「大丈夫だよエステル。今回はカロルもジュディも居たからそんなに大した怪我はしてない」

「そうなんです?でも珍しいですねカロルとジュディスと一緒なんて」

そうなのだギルドを結成して間もない頃は常に三人と一匹で行動していたものだが、ギルドが有名になり沢山の人が入った今ではそんなに一緒に行動することがなくなったのだという。

「本当はオレと他のメンバーで戦ってたんだが、思った以上にてこずっちまって今日帰れるかどうか分からなかったんだ」

「えっ、そうだったんです!?あれっ、でもそれじゃあどうして二人は・・・」

「“早く帰ってあげないと奥さんがが可哀想よ”だと」

「えっ、それってもしかしてジュディスが・・・」

「そっ、ついでに言うとカロルまで“早く帰ってあげないと駄目だよ”なんて言うんだぜ?」

私はその事を聞いて心で二人に感謝した。


だって私はユーリに会いたくて仕方がなかったから。

そう、ユーリは五年前の戦いの後一人で二年間旅をして、その後に思いを伝えあい、私と結婚して二人でハルルに暮らしている

旅が終わった後真っ先に私の所へ報告しに来てくれた。


“ただいまエステル”

“っ、お帰りなさいユーリ!”

“やっと終わった”

“無事で良かったです”

“あぁ、だからエステルやっとお前に伝えられる”

“伝える?”

“そうずっと伝えたくてでも旅が終わるまで伝えないって決めてた言葉があるんだ”

“オレはエステルお前のことが”





“好きだ”







ぼーっと思い出に浸りながら考え事をしていると。

「エステル?」

彼に声をかけられた。

「はっ、はい?」

危ない、深く考えてたら危うく彼の声を遮断してしまうところだった。

でも彼にはお見通しのようで

「また何か考えてたな?」

「わっ、わかるんです!?」

「エステルは分かりやすいからな」

「むぅ、何だか悔しいです」

「ははっ、まぁいいじゃねえかエステルらしくて」

「そうです? あっ、ユーリ夕飯にしましょう?今日はユーリの好きなマーボーカレーとデザートにクレープを作ったんです」

「おっ、やりぃ。サンキューなエステル」

そう言って嬉しそうな顔をする貴方に私は幸せになる。

そして私たちは微笑み合いながらリビングへと入る。


貴方と出会えたから外の世界を知ることができた

貴方に出会えたから皆と出会えた


貴方と出会えたから貴方と共にありたいと思った

どれも切っ掛けは貴方で私の世界に貴方がいることが当たり前になっていた


貴方に出会えたことで私の時間が動き出した

だからこれはきっと奇跡なんだ

私は今ユーリと二人で共にいられることも奇跡なんじゃないかと私は思う。

今回の依頼のことや最近のカロルやジュディスのこと、いろいろな出来事などを楽しそうに話すユーリに微笑みかけて、私も完成した絵本のことを話した。




あるお姫さまと旅人のお話





これはお姫さまと旅人の奇跡の物語




End
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