意地悪な王子様
□あまりに楽しそうに笑うから
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「なぁなぁ吉野。」
昼休み。
いつも通り屋上で昼食を食べていた。空を眺めていた俺は不意に名を呼ばれ、隣に座る恋人:勇人さんを振り向く。
「部活、入んねーの?」
勇人さんは先輩だが小首を傾げつつ聞いてくる様は、年下に見えなくもない。なんというか子供っぽい。決して悪い意味ではなく。
「....興味ないので。」
もう、暦は五月になる。大体の一年生は部活に入り、日々青春している。だが俺はいまだに何にも入っていない。
「そー言わないでさ!!バスケやろうぜ!?楽しいぞー!!」
「...部活というか、バスケ部に入れって言ってるんですか?」
「まぁ、そう言うことw」
勇人さんがニカッと笑った。彼はバスケが大好きだという。一年の頃からスタメンだったそうなので、実力も十分にあるのだろう。
「吉野背デカイし!!それに、さ...........帰り、一緒に帰れんじゃん...?」
ポリポリと頬を掻く。照れているのだろう。かわいらしい。
「....そうだな....」
「じゃあ!!!」
パァッと勇人さんの瞳が輝いた。期待のこもった目が向けられる。
「入るとは言ってません。」
「えぇぇ.........(ズーン」
今度は一気に落胆した。コロコロ変わる彼の表情は見ていて飽きない。ついつい頬が緩む。
「まぁ、見学くらい行ってあげますよ。」
「まじで!?やった!!!」
また表情が明るくなる。
いつもなら上から言うなと怒るのに、それも気にならないほど嬉しいのか。
「(単純....)」
俺はつられるように微笑んだ。