君+僕=幸

□君と僕のはじまり
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「あ?なんだ?」



鋭い目がこちらに向けられる。
おそらく大抵の人なら怯えてしまうような視線。


それほどの威圧感があるのに、その瞳から目が離せなかった。

怖くてというわけではない。
黒曜石のような黒い瞳に見惚れてしまったからだ。









「.....お前、俺が怖くねぇのか?」

「は?」



突然の問いかけで驚きの声をもらすと、
彼はまぁいいかというような仕草で後頭部を撫でた。



「お前も1年だろ?名前は?」



さっきとは違う質問をしてくる。


"も"ということは彼も1年なのか、世界というものはひどく不公平だと思った。

同じ年なのにどうしてこんなに違うんだろう。
せめて僕もあと数センチ身長があれば、女子に間違われる回数も減っただろうに...

まぁ、別にいいけど...




「人に名前聞くときは、自分から名乗るのが筋なんじゃないの?」



いつもの癖で素っ気なく言うと彼は少し驚いたような顔をした。

そしてすぐに嬉しそうな顔をして話し出す。
何がそんなに嬉しいのだろう、僕には全然わからない。




「あぁ、わりぃ。俺、久我琉惺(こがりゅうせい)ってんだ。まぁ、よろしくな。」



効果音を付けるならニカッだろうか、さっきまでのクールな雰囲気とは裏腹に明るく笑った。





「ほら、お前の番。」

「...............藤村斗真(ふじむらとうま)」



自分でも愛想のない返答だと思う。

けれど、



「斗真か.....そうか。」



琉惺と名乗った彼は満足そうに笑うと、ひらひらと手を振りながら校舎へ向かって行った。



またな、斗真。と言い残して...





「(なんなの?呼び捨てだし...変なやつ。)」



だがそんなに深く気に留めず、また小説に視線を戻した。









しばらくして気が付けば、桜並木を通り過ぎて行く人も増えていた。

時計を確認する。
あと15分ほどで9時になる。



「(そろそろ行こう。)」




僕は小説をカバンに仕舞い、校舎へ向かった。




 
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初対面の二人。

斗真はまだまだクールです。




 
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