ポケモン 短編
□寝る前の小話
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『ゲーチス…ねむれない』
Nの笑顔を見ながら、ゲーチスは思い出していた
幼いNが、不安げな表情をしながら自分の部屋に訪れる光景を。
《一緒に寝たい》という意図は分かっていたが、
ゲーチスはNを受け入れることはなく他人(獣)任せにしていた。
当時のゲーチスにとって、
Nはただの道具であり
自分の領域に入っていいものでは決してなかった。
それが、
いつの間にかこんなにも入り込んでいた。
自分も弱くなったものだとつくづく思う。
今ではNの笑顔が、明るさが、ゲーチスにとっては最高の癒やしだったりする。
憎き裏切り者であり、
また、勝手に自分の領域に土足で踏み込んできて、
完璧だった自分を崩してしまった相手だというのに………
ゲーチスは深く、色々な感情が混ざった溜め息をついた。
「お前のことは…好きにはなれません」
色んな意味で。
ゲーチスはNの表情を伺った
Nは、嬉しさを表した後直ぐに『好きになれない』と否定されたというのに、表情を崩さない。
人の感情を汲み取るのが上手くなったNは、しっかりとわきまえている。
「………」
ゲーチスは、Nを撫でた
こんな息子を否定したままでは何だか申し訳ない気がして。
「……………と…」
Nは、少し照れくさそうにゲーチスの肩に顔を埋めて、動かなくなった。
Nを撫でながら、ゲーチスは以前は出来なかった表情をして笑んだのだった。