ポケモン 短編

□聖日
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[どこかシティ]

数週間前から街には綺麗なイルミネーションが施されていた

今日はクリスマス。

街中の明るい雰囲気に青年…Nは微笑んだ


「…N様」

突如背後から聞こえた声にNは振り返る

「お帰り。ご苦労様」

振り返った先には、冬の始めにNが買ってあげた灰色のコートに身を包んだダークトリニティの一人が買い物袋を持ちながら立っていた

「さ、帰ろうか」

ダークに笑顔を向け、Nは手に持っていた箱を大事そうに抱え、歩き出した。











[隠れ家帰宅]

「ただいま」

頭やコートに付いた雪を払いながら一緒に付いてきてくれたダークと家の中へと入っていく

ダークと買ってきた食材やクリスマスケーキを台所に置き、Nが自らの部屋に向かっていた時

「おや、お帰りなさい。N」

父であるゲーチスが自分の部屋から丁度出てきた

「わっ…父さん!」

Nはとっさに手に持っていた箱を後ろに隠す

「何ですか…そんなに驚いて…」

少し呆れ顔でゲーチスはNを見る

「何でもない!ただいま!」

そう言ってNは小走りで自分の部屋に入っていく


「…危なかった……」

そう呟きNは手に持った箱を見る

この箱の中には、先程街で買ってきたゲーチスへのクリスマスプレゼントが入っている

ーまだカレには知られるわけにはいかないよ…

箱をそっと、クローゼットに隠し、Nは自室から出て、
いつも皆集まるリビング的な所に向かった


リビングにつくと、N以外のこの家の者達が皆、そこに居た


「お帰りなさいませ、N様。」

一緒に出掛けたトリニティ以外の二人のトリニティがNに頭を下げた

「うん。ただいま」

二人にニコッと笑み、Nは椅子に座って本を読んでいるゲーチスの元に寄る

「とーうさんっ」

そしてNは後ろからゲーチスに抱きついた

「!?」

いきなり抱きつかれて、驚いた顔でNを見るゲーチス

「何読んでるの?」

「…お前には縁のない本です」

そう言ってゲーチスはパタンと本を閉じ、Nの腕を掴んだ

「離してくれます?」

「嫌だ。甘えさせてよ」

即答したNに対しゲーチスは溜め息をついた

「…全く…。最近のあなたは調子に乗りすぎです。少し甘い顔をしたら直ぐ甘えてくる…」

「いいじゃないか。今までの分を取り戻したいんだ!それとも何?ゲーチスはボクのことが嫌いなのかい!?」

「嫌い…ではありませんが……」

ゲーチスは肩を下ろした
少し前まではこんな子ではなかったのに…と思う。

ゲーチスが正気を取り戻してから暫くは気を遣っていたものの、最近はこうして遠慮がなくなってきている

スキンシップに慣れないのは同じだったはずなのに
気付いたらことある事にベタベタしてくるようになっていた

…きっと…あの例の忌々しいトレーナー達の影響と思う

「ダークトリニティ達もいるのです。少しはわきまえなさい」

Nは、見た途端視線を逸らしたトリニティ達を呼んだ

「キミ達も混ざりたまえ!五人で仲良く温まろう!」

「何故そうなります!?」

ゲーチスが叫んだ

「仲良し家族だから」

「意味が分かりませんが…」

ハァとゲーチスは溜め息をついた

「ゲーチスは父さん。トリニティ達は兄さん、ボクは末っ子」

「何ですかその設定」

ゲーチスは溜め息をつきながら顔を覆う


「ボクはいつもそう思っているけれど?後女神達は姉さんかな」

ニコッとゲーチスから体を離し微笑んだN

「皆父さんに育てられた身だし、兄弟でいいと思うんだ」

「………」

黙るゲーチス

「さ、兄さん達も入りたまえ」

「い…いや…その…」

ゲーチスは来るなというようにトリニティ達を睨んでいた

だからトリニティ達はその場でたじろぎながらも動かない

「………。はぁ…まぁ、いいよ。強制はしない」

トリニティ達の反応を見てNは寂しそうにしながらも言った

「うぅ…。仲良くしたいだけなのになぁ…」

いかにも落ち込んでいるふうのNに対しトリニティ達は謝った

「いいよ。誰が何をしようと思おうと、人それぞれだからね。気にしないでくれたまえ」

Nは優しく彼等に笑んだ

「さ、夜ご飯を作るとしようか。今日のご飯はいつもより豪華だし手間がかかるからね。トリニティ達も手伝ってくれ」      

「「「御意」」」

まだ午後四時を過ぎた所だったが、Nは準備を始めた

トリニティ達もそのNの言葉には従い、一緒に準備をする

「……ワタクシは何かやることはないのですか?」

取り残されたゲーチスがNに問う

「父さんは、部屋で休んでて。とびきり美味しいものを作るから、楽しみに待っててくれ!」

自信満々に楽しそうな表情をしたNを見てゲーチスは何度目かの溜め息をつきその場を去った
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