short Pdl
□最後まで隠す理由
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入学早々回りの視線が痛いほど降り注ぐ。
まあこの髪色だ、無理も無い。
いちいち気にてられるか、そのまま堂々と教室へ向かう。
教室に入れば驚いた顔した人がほとんどだが一際視線を感じた方向へ顔を向ければ隣の席の女子がやたらキラキラした目で見てくる。
「そんなに見られたら穴空くッショ」
「そ、その髪、は地毛ですか!!!」
・・・何だコイツ。
地毛だと答えればキラキラした目がもっとキラキラした。
キモいとか言われるよりはマシか。
*
最初の出会いから2年。
気付けばアイツとはかなり親しい仲になっていた。
いや、違うあいつがやたら話しかけてくるから別に、親しいって訳じゃない、多分。
新3年として、学校へ行きクラス名簿の欄を見れば見慣れた名前を見つける。
「今年も同じクラスかよ…」
「あっ巻きちゃーーーん!」
「だからその呼び方やめるッショ!!」
「ロールちゃん」
「もっと嫌ッショ!!!」
「おいおい、朝から元気すぎるコンビだな」
「田所っち違うッショ!」
「ほら巻ちゃん予鈴鳴る!田所っちおはよう!あ、予鈴鳴った!走るよ巻ちゃん!」
「朝からうるさいッショ…」
朝から廊下を走ったりなんてこいつじゃなけりゃ絶対しない。
落ち着けるのは授業中だけしかない。
あとは部活ぐらいか…。
授業中は寝てるからな。基本ずっと。
「んー暖かいなあ、自転車日和ッショ」
「真似したらどっちが喋ってるか分かんねぇッショ」
「…ねー巻ちゃん、今年のインハイ、忍者さんと勝負するんだよね」
「当たり前ッショ」
「…今年は見に行ってもいい?」
「絶対ダメだ」
「なんでよ!!」
俺の自転車乗ってる姿見せたら絶対キモいとか怖いとか色々言われる。
俺のダンシングはこいつにだけは絶対に見せたくないと、過去のインハイも見に来るなと何度も言い続けた。
こいつは俺が山を登るところを一度も見たことが無い。
だからそのまま卒業してしまえば見られることも無い。
「お願い、巻ちゃんのインハイ見に行かせて」
「絶対ダメだ」
「何でそんなに嫌がるの、最後なんだよ?」
困ったような泣きそうな顔で言ってくるけど、
絶対、だめだ。
信じてないわけじゃないけど、誰でも始めてみたときはおかしいって思うはずだ。
小野田みたいな奴を除いて。
最後だからこそ、見ないままでいい。
嫌われたり痛い目されるのはもう勘弁だ。
「お前にだけは嫌われたくないッショ」
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