H×H 連載夢

□第九章
1ページ/9ページ

『へぇ〜!じゃあ3人とも、試しの門を開けられるようになったんだ。おめでとー』

パチパチとユラが拍手する。

今は朝食時、彼女が同じテーブルにつくのは今回が初めてだ。



「スッゴいんだ!レオリオなんて2の扉まで開いたんだよ!」

『おお…!さすがレオリオ』

「いやあ〜それほどでも、あるかな?」


照れるレオリオの横で、オホンとクラピカが軽く咳払いをした。


「そこでなんだが、ユラ」

『うん』

「今日、キルアを迎えに本邸へ行こうと思う」



 −ただし、ゴンとレオリオと私の3人で、だ。


その言葉に、きょとんとユラは紫色の目を丸くした。

この小屋に来てから、そろそろ20日。
彼女は、ついに他の人格と一度も交代せず、ずっと“ムラサキ”のままだった。

−………まあ、易々と人に知られていい事情でもないのだろうが。


そうしていると、本当に普通の女の子にしか見えない。


クラピカは、ユラの目を見ながら再び口を開いた。


「ユラにはここに残ってほしい」

『女子禁制、と』

「…そういうことではない。しかし、お前が我々に着いてくるのは危険なんだ」


と、ここでレオリオが口を挟む。


「お前の傷、昨日見せてもらったけどよ………まあ、ネテロ会長が言ってた通りかなりの回復力だ。それは認める。
ただ医者の卵として言わせてもらえば、お前の傷は皮膚表面が完全に治っていても、内臓までがそうとは限らねえ。仮にも心臓スレスレを貫通したんだ。相当体にその負担が残っていてもおかしくねーんだよ」


「よーするにね」


最後にゴンが、ユラの顔をのぞき込むようにして言う。



「ユラには、待っててほしいんだ。俺たち”4人“が帰ってくるのを」



ユラはゆっくりとまばたきをした後、少し視線を落としつつ至極あっさりと頷いた。

『そっか。わかった』

「……あー、一応言っておくが、別にユラがいるのが迷惑とかそんなんじゃねえんだ」

とレオリオがあわてて弁解を始めるが、

ユラは笑顔でカップを持ち上げて見せた。

それは、ゼブロが彼女のために用意した、普通の重さの食器の1つだった。


『まあ、そもそも試しの門を開けられなければ、ゾルディック家に入る資格はないみたいだし。僕は開けてないもんね。頑張ってね、3人共』


こうして、ゴン、クラピカ、レオリオの3人は出発のための準備を始めた。



*****



「絶対に無茶すんなよ!大人しくしてるんだぞ!いいか、絶っっっ対だぞ!!」


レオリオが何度も念押しするのには訳がある。


実は、先ほど荷物整理のためにちょっと目を離した隙に、ユラが何をしていたかというと。


「……まさか、薪割りしようとしてるとは思わなかったよね」

オレが気づいてよかったよ、と小声で言うゴンにクラピカも頷いて見せる。

本人曰わく、ここに身をおかせてもらうからには、何か手伝いをしようと思ったらしいが。

「何もその体で200キロの斧を振り回そうとせんでいい!!」

『えー』

クラピカは未だガミガミと説教されていているユラに近づいた。

「まあ、ただ部屋でじっとしているのも退屈だろう。これでも読んいたらどうだ」

一冊の分厚い本を貸してやった。


すると、予想外に嬉しそうな顔をして、

『−ありがとうございます!私、本を読むの大好きなの』

「!」


彼女の目が深い蒼色に変わった。

−確か、”アオイ“という人格だったな。


しかし、それもほんの一瞬で、


『ありがとう。クラピカ』

「あ、ああ」


再び“ムラサキ”が表に出てくる。



そのまま“ムラサキ”はふと遠くを見やった。



『いよいよ、本邸に出陣だね』

その言葉にゼブロが反応した。

「おや、ユラさん。本邸のある場所をご存知で?」

えっ!とゴンとレオリオとクラピカの視線が集中する中、彼女は顔に?マークを浮かべて首を傾げた。

「ユラさん、いまあちらを見て本邸とおっしゃったでしょう?確かに、そこの小道をあちらの方角に向かって進めば、本邸へいけるはずなんです」

「はず、とは?」

と、クラピカが聞く。

「お恥ずかしい話、20年勤めていて、実は山まで行ったことがないんだよ。お役に立てなくてすまないね」

「とんでもない!」

と答え、ゴンはそのままユラに視線を戻した。

「でも、ユラはなんでわかったの?」

『なんでって……』

困ったように笑いながら、ユラは言う。

『バスガイドさん、言ってたじゃないか。あの山のどこかに、ゾルディック家のアジトがあるってさ。ただ山の方角を見てなんとなく言ってみただけなんだけど』

「あ、そっか」


『……3人共、バスガイドさんの説明まともに聞いてなかったでしょ?』

ゴンが決まり悪そうにエヘヘ、と笑った。


「−しかし、お前よォ、こいつらよりハンター暦ながいんだろ?一度でも、ゾルディック家に乗り込もうとしたこととかねえのか?」

見送りに出てきてくれたのだろうシークアントの質問に、ユラは肩をすくめて、

『まさか!自分から乗り込もうなんて思わないよ、こんなややこしいところ』


死んじゃうよ、と笑った。







割と和やかな雰囲気の中、ある種の緊張感を持って3人は出発した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ