H×H 短編夢
□涙雨
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ふと目が覚めた。
ぼんやりと時計を見れば、いつもの自分なら有り得ない午前4時。
ザアァ………
「……雨、か」
オレが呟くと、うーんと隣でキルアが寝返りを打った。
しかし、さらにその隣。
もぬけの殻となっているベッドを見て、オレはドキリとした。
「ユラ?」
「………ユラ?」
本人がいないのだから返事がないのは当たり前だが、やけに不安を覚えて、オレは外に出た。
そして、
玄関を出た所で立ちすくむ。
ユラは其処にいた。
雨に濡れるのも厭わず、空を見上げ、ただぼんやりと突っ立って。
張り付いた髪で彼女の目元はよく見えない。
その頬には幾筋も水の流れた跡。
恐らく雨が顔に当たったのだろうが、オレにはユラが泣いているように見えた。
「ユラ……」
自分でも驚くほど掠れて上擦ったその声に彼女が振り返る。
「あれ?いつからいたの?」
びっくりしちゃったよ、と。
そう言った彼女の笑顔が、どこか歪に見えて。
「……なにしてるの」
次に発した言葉は硬く響いた。
オレのいつもよりずっと低い声にユラは目を見開く。
彼女が口を開きかけたのとほぼ同時、オレは冷え切った細い腕を掴んで、無理やり玄関に引きずり込んでいた。