H×H 短編夢
□赤く紅く朱く
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その女子高生に気づいたのはランニングを始めて一周目だった。
そのとき、彼女は川沿いのベンチに腰掛けて本を読んでいた。
着ているのは、確かこの近所にある女子高の制服だ。
そのときは別段気にもとめなかった。
マフラーに深く顔を埋めるようにしていて、どんな表情をしているのかすらわからなかったから。
−気になり始めたのはランニングを始めて五周目。
もうすでに一時間は経過している。
日はもう暮れているし、あたりに人気もなくなっている。
そんなことにも気づいていないほど、彼女は本に没頭している。
「………あの!」
『………』
足を止めて呼びかけて見るも、
うん、無視された。
ていうか、気づかれてもいない。
今度は近くまで歩いていって声をかけた。
「ねえ、君」
『………』
……ダメか。
そんなに夢中になるなんて一体なんの本なんだろう。
のぞき込もうとして、
『……ッ!?』
「!!」
−目があった。
長いまつげに縁取られた、深い焦げ茶色の大きな瞳に、
ゾクッと。
背筋に何かが駆け抜けた。
お互い見つめ合っていたのは大体五秒かそれ以下か。
『っにょああぁ!?』
「あ、ちょ、」
素っ頓狂な悲鳴を上げて立ち上がった彼女は、
「……大丈夫?」
ステーンとそのまま後ろにひっくり返った。