H×H 短編夢
□涙雨
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「ねぇ、どうしたの?…わっ」
彼女のどこまでも朗らかな声が悲しかった。
「おーい……」
「……」
ぎゅっと抱きしめると、逃げはしないものの全身を強ばらせているのがわかる。
「オレじゃ、力になれない?」
「……」
「オレは、頼りにならない?」
「……」
「ねぇ?」
濡れた髪に顔を埋めると、雨の香りがした。
そして、微かに甘い香り。
女の子の、香り。
それをすーっと吸い込んで、ビクッとユラが震えたところで、
「風邪引いちゃうね」
潔く顔を上げる。
にこりと笑えば、珍しく虚をつかれたのか本気で驚いた顔をしている。
雨に身を晒した理由を、問い詰めるとでも思ったのだろうか。
そんなことはしない。
そんなことをしたら、ユラは逃げるだろうし、
そんな自分を自分で責めるだろうし。
「お風呂入りなよ、女の子は体冷やすとダメでしょ?」
「…うん」
「でもね、」
コツンと額と額をくっつける。
「オレはいつでもユラの味方だからね。困ったことがあったら、必ずとは言わないけど話してね」
−オレは鈍感だから、話してくれないとわかんないし。
冗談めかして言うと、ユラの力が抜けていく。