H×H 短編夢
□涙雨
3ページ/3ページ
タオルを手に戻って来ると、断りもなくオレはユラの髪を拭いた。
「……夢見が悪かったんだ」
「え?」
タオルの下からくぐもった声が、意外すぎる内容を告げる。
「あれは夢で、現実じゃないんだって、確認、したかったんだ、と思う」
「うん」
「夢の中でも雨が降ってて、でも冷たさとか感触とか、何にも感じなかった」
「うん」
「起きたら、ちょうど雨が降ってたから、本当に起きたのかまだ寝てるのか、現実なのか夢の中なのかわかんなくなって、だから、」
「うん」
「ホントに、ちょっとパニックになっちゃっただけ。ホントに、それだけだよ」
「うん」
タオルと前髪に隠れて、ユラの表情はよく見えない。
いや、それよりも。
−………話してくれた。
全部じゃないけど、ユラが、オレに。
思いっきり抱きつきたいのを抑えて、驚かせないようにそっと抱きしめる。
「ありがとう、話してくれて」
「ありがとう?」
「そう!ありがとう、だよ」
押さえきれない頬の緩みをごまかすように、その白い頬に頬ずりした。
「………えへへ、どういたしまして」
そう答えたユラの声は笑っていたけれど。
そのとき、2人の頬の間をつたったのが雨だったのかどうかは、わからない。
FIN.