H×H 短編夢

□涙雨
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タオルを手に戻って来ると、断りもなくオレはユラの髪を拭いた。


「……夢見が悪かったんだ」

「え?」


タオルの下からくぐもった声が、意外すぎる内容を告げる。


「あれは夢で、現実じゃないんだって、確認、したかったんだ、と思う」

「うん」

「夢の中でも雨が降ってて、でも冷たさとか感触とか、何にも感じなかった」

「うん」

「起きたら、ちょうど雨が降ってたから、本当に起きたのかまだ寝てるのか、現実なのか夢の中なのかわかんなくなって、だから、」

「うん」

「ホントに、ちょっとパニックになっちゃっただけ。ホントに、それだけだよ」

「うん」


タオルと前髪に隠れて、ユラの表情はよく見えない。

いや、それよりも。






−………話してくれた。


全部じゃないけど、ユラが、オレに。






思いっきり抱きつきたいのを抑えて、驚かせないようにそっと抱きしめる。

「ありがとう、話してくれて」

「ありがとう?」

「そう!ありがとう、だよ」


押さえきれない頬の緩みをごまかすように、その白い頬に頬ずりした。

「………えへへ、どういたしまして」

そう答えたユラの声は笑っていたけれど。




そのとき、2人の頬の間をつたったのが雨だったのかどうかは、わからない。






FIN.
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