S.K 連載夢
□第零章
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『じゃあ、死ぬまでにどうしてもやりたいことは何かないのですか?私、せっかくこんなところまで来たのに』
なおも言う狐に、私はアグラをかきながら、
「例えば?」
『あの少年を呪い殺して道連れに』「しねーよ」
えげつない狐だな。
なんだかつまらなそうにクルリと中を舞う狐に、私はふと思いついて聞いてみることにした。
「ねえ、ただ生き返らせるだけじゃなくて、私が霊を見えるようにすることって可能?」
『ええ、もちろん可能です。いきなり話が大きくなりましたね、やはりこの世に未練が?』
「っていうか、あなた強そうだし、もしかしたら今度はカスみたいな人生にならなくて済むかなって思ったら急に」
どうせなら、面白い人生がいい。
例え、どんな代償を払っても。
私の言葉を聞いて、狐は楽しそうに笑った。
『それで、この私に生き返らせる他にも要求を?
いいですとも。私も退屈でしたからね、今ならどんなに低い代償でもその願い、叶えて差し上げますよ』
「私の寿命を50年あげるよ」
『……今、なんと』
「私の命を50年分あげるって言ったの」
だから、私を強くして。
ずっと、私の側にいて。
呆然とする狐に、私は久々に声をたてて笑った。
こんな、こんな汚い私に縛り付けて、
ずっとそばに置いておくのなら。
このくらい、当然の代価だ。
やがて狐は覚悟を決めたように顔を上げた。
『……ならば私も、
全力であなたをお守りします』
まぶしい光に包まれて、
私は何も見えなくなった。
*****
目が覚めると、見知らぬ天井の木目が見えた。
起きあがろうとすると、口元から白い布が落ちた。
あー、これって死者の顔に載せる……アレだ。
「わお。もしかして、私、一度死んじゃった的な?」
『だから、蘇らせたんじゃないですか』
耳元であの狐の声がした。
でも、姿が見えない。
『でしょうね。ところで、脇に置いてある鏡を見てもらえますか』
「はいよー。ん?」
鏡の中に映る私は、白銀色の髪に灰色の瞳、透けるような肌色の少女になっていた。
「ナニコレ」
『蘇らせる代償として、色素をもらいました。元々、色素をもらってから、生き返らせるつもりだったんです』
「ヘーナルホド」
『では、一度目を閉じて下さいな』
「え、なんで」
『いいから。はい、開けて』
目をあけると、私の瞳は見事な緋色に染まっていた。
しかも、肩の上に狐がいるのも見える。
そして狐は、何故か金色の目だけを開いて、他の2つの目を閉じている。
……えーと、つまり、どういうことだ?
『私の目を貸しています。これで、あなたは霊を見ることが可能になりました。
ただ、あなたはもともと多少なりとも霊感があったので、霊の声を聞こえるようにするのは簡単でした』
「なるほど。じゃあ、私はあなたに目を貸してもらわないと霊を見ることは出来ないけど、声はいつでも聞こえるわけね」
『そういうことです』
「転生した先で殺されて、蘇って。…うん、なんか面白くなってきたじゃん」
『良かったですね』
「よし、
じゃあ、行くか」
ここから始まる、私の短い喜劇(ジンセイ)を、
せいぜい楽しんでやろうじゃないか。
(ところで、私達一人称被るよね)
(ええ、まあ)
(じゃあ私、今日から一人称は“俺”にしよう。そうしよう)
(……いや別に無理に変えなくても)
(ついでに髪もかなり切っちゃおう。ねえねえハサミどこかな)
(聞いてませんね)