イナGO短編集

□狩屋くん
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「天馬君〜」

うん? 誰か呼んだ?

振り返ると狩屋がいた。

「どうしたの?」

「……」

どうしたんだろう?

急にハッとした顔になったと思ったら黙り込んじゃって…。

「狩屋?」

「やっぱり何でもない」

やっぱりおかしい

「どうしたの? 俺に言えないことでもあるの?」

「……」

狩屋はうつむいた。

うつむいた狩屋の顔は赤かった気がする。

だから冗談交じりに聞いてみた。

「分かった!! 霧野先輩のこと?」

「ち、違っ……わない」

まさか本当に正解だったとは…。

「確かに神童先輩と霧野先輩はすごく似合ってると思う」

狩屋が喋り始める。

「でも、俺のこともたまには見て欲しいな、なんて思っちゃったりして
でもやっぱり霧野先輩は俺なんかに似合わないな、なんて思って……
ゴメン、こんなこと言い出した俺が悪かった
天馬君に言っても分かんないよね」

「狩屋……」

俺は気づいたら、誰にも言えないような事を話していた。

「分かるよ……狩屋の気持ち、俺にも分かる」

「え?」

狩屋はびっくりした様子だったけど俺は構わず話し続けた。

「だって、俺も剣城に好きだって言ってもらえる前までそう思ってたもん
剣城、すごいお兄さんの優一さんと居る時が一番楽しそうで
やっぱり優一さんのことが大好きなんだろうなって思ったりして
2人とも似合ってるなって思って……
でも、やっぱり剣城のことあきらめられなくて
好きになって欲しいとは言わないけど、せめて優一さんの次くらいに意識して欲しいなって思ったりして
でもなかなか想いが届かなくて
何度も何度も剣城の後ろ姿ばっかり眺めてきた」

何言っちゃってるんだ俺。

しばらく流れる沈黙。

それを切り裂いて狩屋が俺に質問する。

「どうやって乗り越えたの?」

「想いが届かないなら届かないなりに、さっさと伝えて忘れちゃおうって思って
2人でいて楽しいなって思えたときに告白した。さりげなく。
そしたら剣城が『俺もだ』って……」

俺、大丈夫か?

こんなこと口走るなんてどうかしてるぞ、俺。

「そうなんだ……。俺、どうすればいいかな?」

狩屋が聞いてくる。

「神童先輩のことも考えて、その上で自分は霧野先輩のどういう存在になりたいか決めて
それを全力で伝えればいいんじゃない?
なんとかなるさ!」

つらそうな顔をしていた狩屋が少し顔を上げて口元を緩めた気がした。

「あ!! 俺のこと笑った!?」

「そんなことないよ」

「何がおかしいんだよ、人がせっかく本気で喋ってるのに!!」

「だから笑ってないって。でも、ありがとう。天馬君」

狩屋が向き直ってお礼を言う。

「うん、頑張って」

走り去っていく狩屋の背中は何かを決意したように見えた。

――END――


天馬君がいつになくシリアスな感じになってしまいました。
はい、駄作小説でした。
読んで頂いて誠に感謝です。

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