イナGO短編集

□オフ日の遊園地
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乗ったはいいものの、気まずさが漂う。

「…霧野先輩。なんで俺と乗る気になったんですか?
俺と2人で乗らなきゃいけないことが分かった時点でやめるのが普通だと思うんですけど。」

また、思ってもいないことを口に出してしまった。
どうして俺はこんなに思ってることと違うことしかできないのだろうか。

「俺もなんでかよく分からない。」

霧野先輩はうつむき加減で答える。

「でもこれだけは言えるんだ。…この際だから言っていいか?
狩屋は自分の気持ちを素直に伝えられないことにもどかしさを感じてると思う。
でも、そんな狩屋の本当の気持ちがその純粋な目からすごく伝わってくるんだ。
俺は神童が好きだ。でも、そんな狩屋の気持ちからも目はそむけられない。
だから、どうすればいいか分かんなかったんだ。」

俺って霧野先輩にそんなに迷惑かけちゃって…
何やってんだろ俺。

「別に、俺は霧野先輩のこと好きとか思っちゃったりしてませんから。」

また本心とは違う言葉が口から飛び出す。

気付いたら観覧車はてっぺんに差し掛かっていた。

海が見えた。水平線に沈みかけの夕日がだんだんにじんでいく。

霧野先輩に俺の目から流れ出す物体を見られたくなくて、俺はわざと窓の外を見続ける。

「嘘だってこと、バレバレだぞ。」

霧野先輩は俺の頭に手を置いた。

「辛い思いさせちゃってごめんな。俺がなんとかする。」

相変わらず霧野先輩は優しい…。

―好きになっちゃいけないって初めから分かってた。
 好きになったところでこういう結末にしかならないってことも分かってた。
 でも、キミのその優しさにボクは魅かれたんだね。
 だからせめてキミの幸せをボクは祈ります。
 いろいろと迷惑掛けちゃってすみません。―

観覧車が一番下まで降りる。

開いたドアの先には神童先輩、天馬君、剣城君が立っている。

涙を拭きとって話しかける。

「ただいま!…です。」

――END――


少し長めになってしまいました。可哀想な狩屋もこれで吹っ切れて蘭ちゃんのことあきらめてくれればいいんですけど……。
ともかくこんな駄作を最後までお読み頂き、誠に有難うございました。
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