The prime
□pressure
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自室にある60センチ水槽ですいすいと気ままに泳ぎ回るその姿はまるで遙のよう。
ベッドに寝転びながら、LEDによって青く照らされた水槽を見つめぼうっとする。
「お前はどう思う?」
数匹いる魚のうち、青い色をした"ナナ"と名付けた熱帯魚に話しかける。
勿論、目の前のナナは何の反応も示さずまるで俺がいないかのように水草の間をすり抜けて泳いでいた。水槽を覗くのをやめ、天井に視線をやる。複雑な気分だった。その原因は紛れもなく夕方の出来事のせい
「拓也、俺も勃った」
そんな言葉を聞いたら我慢なんてできるわけがない。思春期男子を舐めてると痛い目をみるということを幼馴染に教えてやる為、俺は行動に出た。あとからだからテキトーな言い訳が出てくるがあの時は反射的に動いたようなものだったと思う。嬉しさなんかは、後からじわじわ湧き上がってくるらしい
遙の肩に手を当て押し倒す。映画か何かの主人公にでもなった気分だった。
びっくりしている様子の遙を視界に入れつつ綺麗に割れた腹筋に顔を近づける。俺の唇が肌に触れても遙の抵抗は無かった。
「脱がすぞ」
馬鹿みたいに興奮してそれに緊張もしているものだから自分が思っているよりも早口になるんじゃないかと心配しながら発した言葉は震えていた。恥ずかしい…
先ほどとは逆のされるがまま側になった遙は特に何も言わない。それを自分の良いように解釈した俺は水着に手を掛けた。競泳用の水着だから勿論脱がしにくい。もたもたして遙の気が変わったらとハラハラしながらも水着をズリ下げながら遙の表情を窺と顔を横に向けていた。可愛い、昔からの癖だ。先ほどまでの興奮からくる胸の鼓動とは別のきゅうと締め付けられる感覚。ツボってやつだろうか、俺は遙のこれと、犬のように頭を振って水気を掃う仕草に弱い。基本的にこいつの全てには弱いのだけれど
段取り良くいかない性行為に軽くパニックにも似た状態をなんとか誤魔化しながら、最後は遙が自らの腰を上げて隙間を作ることでようやくペニスが顔を出した。腫れたように赤く色づく亀頭が厭らしい。綺麗に上を向いたペニスに俺のペニスも同調するように大きくなった。
「遙の勃起状態が見れるだなんて思ってもみなかった」
感動からつい気持ちの悪い感情が零れてしまう。それだけじゃ済まされず目頭が熱くなった。
「…」
嬉しい。その感情はぐっと堪えて、遙が何も言わないのを良いことに少しの躊躇の中遙の首元に顔を寄せた。
「嬉しい」
そこまでの堪え性は俺に備わっていなかった。しょうがない、若いんだから。
遙と初めての零距離による肌の感触、温もり。下半身の触れあい。もう何処に集中したらいいのかもわからない。
「拓也…」
遙の声が何処か色っぽく聞こえるのは俺の妄想なのだろうか。現実ならいい、どうせ調べる術などないのだから。遙の腕が俺の脇腹に触れ鎖骨を伝い肩を掴んだ。
「いつまで放っておくつもりだ」
俺の身体を押し、お互い限界だろうという所まで勃ち上がったペニスを見て遙は言った。
…マイペースさんって怖い。いいけど。そこも好きな所だから、いいけれども。いいのだけれども。というかそんなことよりも
「意外と、遙って性欲あるんだ…」
淡泊。そんなイメージだったのだ。俗にいう下ネタなどを同級生と話している時も余りリアクションが返ってこなかったものだからそうなのかとばかり思っていた。
「俺だって男だ」
少しむっとした遙。馬鹿にしたわけじゃないし、女の子だと思ったわけでもない。ただ感動したのだとも言い出せず、俺は少し笑って、拙い行為を再開した。
裏筋同士を重ね、ゆっくりと腰を振る。初めてこんな動きをした為とても違和感がある。それでもそんなのが気にならないくらい熱くて気持ちがいい。数回繰り返せば、どちらのものかわからない先走りでまた違った感覚がやってくる。遙の息遣いが荒くなっているのに気が付いて嬉しくて堪らなくなった。
もっと、と快感を求めて2つのペニスを一緒に握る。先ほどよりも密着したのもそうだけれど、遙のペニスを握ったことが精神的快楽を与えてくる。
限界がチラチラと頭を過った為、視線をペニスから遙の顔に移す。眉を寄せ、薄く口を開いた遙はやっぱり横を向いていた。横顔も好きだけれどやっぱり正面から見ていたい。そんな欲求から、もう片方の手を遙の頬に当て此方を向かせた。
「こっち見ろ」
遙の瞳が俺が与える快楽で揺れている。言い表せぬ征服感だった。
イってしまいそうになるのを必死で押さえ込みながら最後にキスがしたいと顔を近づける。あと数センチで唇が重なるという所で、遙が先に精子をぶちまけた。
目をギュッと瞑って射精する姿に、ひと泡の罪悪感が生まれた。
頬にあった手を大きく揺れる肩に移動し、遙かの耳元に顔をくっつける。キスは、できなかった。遙の最後の砦のように思えたのだ。直に俺も人前での初めての射精を行った。
ねっちょりとした精液を処理もせず、整わない呼吸の中抱き合うというより重なり合っていると遙が言葉を紡いだ。
「気持ち良かった…俺も、お前が好きかもしれない」
こいつ…絶対快楽に流されて勘違いしてる。でも口にはしない。賢者タイムでも、遙への浅ましい気持ちは変わらないのだ。
「かもって何」
「そういうのは良くわからない」
「そう…」
「拓也は、わかるんだろう?」
「教えろとか言い出すなよ。人それぞれだから俺がああだこうだ言ってお前の物差しを作ったりしたくない。」
これ以上ハードルが上がってたまるものかとそんな自分勝手な感情から出た言葉だった。
今思っても最悪だ。
どうしたもんかと考えていると夜は更け朝になり学校へ向かった。
二限が終わり、移動教室の為友人と廊下に出ると遙に話しかけれる。
「今日は一緒に帰れるか?」
「あー、悪い。今日は委員の当番日なんだよ」
「わかった。また明日な」
「おい、まだ午前中なんだけど。お前まさか今から帰る気じゃないだろうな」
「今日は一日快晴で風も無いそうだ」
「海に行く気か!出るだけでも違うんだからちゃんと学校にいろよなー」
自由気まますぎて将来が心配になる。大丈夫かこいつ
「昨日お前だって海にいたんだろう。それに、ちゃんと出てほしいならお前が見張って
いればいい」
同じクラスに真琴がいるだろうとは、言えなかった。言いたくなかったからだ。
遙が、俺を優先してくれているように取れるこの言葉は、そのまま未来の俺に取っておいてやりたかった。結局俺はそれ以上何も言えず、遙は早退。何故引き止めなかったのかと、真琴にまで説教をくらった。
色々な事が短期間に起こりすぎて、正直俺は着いていけていない。それなのに、すぐに未来のことを考える俺がいて頭の中が大運動会だ。いつもなら音楽を聴きながら人気の少ない図書室で本を楽しむのに、今日はそんな気分にはなれなかった。小さな小さな溜息を吐く。一緒に当番をしている田中に気付かれない様に。
憂鬱は長引きそうだ