The prime
□steady
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「体は、もう大丈夫なのか」
遙の家の前で並んで石段に座る俺達。
「うん、遙こそ大丈夫だった?」
体じゃなくて、その心の問題?の方と続ける。
「気付いてたのか」
「当たり前。というか俺だけじゃなくて部の皆気付いてたよ」
心配して、元気を出して貰おうってのも含めて今日お祭りに行ったのだろうし
遙は申し訳なさそうに眉を下げ、そうかと1言呟いた。
遙の素直な気持ちは、さっき皆で聞いた。俺の気持ちも言うべきだったのだろう。あのタイミングで
でも、言えなかった。俺もメドレーに出たいだなんて
言えなかった度胸の無さには情けなくなるが、俺の希望の光はまだあった。自分で切り開き見えた光ではなく、遙が俺の方も一緒に照らしてくれたのだ。
メドレーのメンバーに俺の名も入れてくれた。
まだ、自分の願望は言えそうにないけれど、でも今言えることもある。
「…救えなくて、ごめん」
「なんでそう思う」
「だって俺は遙の恋人だ。辛いときは傍にいて、少しでも苦しみを分かち合う存在だろ」
「だからお前は風邪を引いたんだろう」
「え、どういうこと?」
ちょっと、真面目な話をしていたつもりだったのだけれど、この話の流れは意味が分からない。
どういうことでしょうか
「夜、プールで泳いでいた俺の分の風邪をお前が背負ってくれたんだろうってことだ。」
遙は優しい表情でそう話すものだから、とても2日連続海とプールで泳ぎまくっていただなんて打ち明けることは出来なかった。
「それに、お前に怒られて、チームの皆と一緒に頑張ってきたことを思い出せたから。俺は、お前という存在が近くにいるだけでいい。言葉がなくても、触れなくても、いいんだ。お前がいる。それだけで、俺の糧になる。」
「今回は、看病に行けなくて悪かった。」
遙はどうしてこうも俺を喜ばせることしか言わないのだろうか。
ぐっと湧き上がってくる涙を必死に受け流した。目は潤んでも構わないが、どうか雫は零さないでくれ
「それは、母さんに家に上げるなって行ってたしいいよ」
「そういえば、粥は食べたか?」
「え?え?」
これは、もしかしなくとも
そう思うと、我慢していた涙がぽたりと石に染みを作った。
「看病をしてやる余裕はなかったから、それだけは作っておばさんに渡したんだ。もう、自分の中で結論は出た。だから、今度お前が風邪を引いたらずっと傍にいて看病してやれる。だから、泣くな」
優しい遙は、俺の背をそっと撫でて泣き止むまで傍にいてくれた
頼りにならない恋人でも傍にいてやると言ってくれた
やっぱり胸の中にあるぐちゃぐちゃ感情は整理することができないけれど、吐出した1つの感情だけは理解できた
「ありがとう」
今日の遙の言葉で、俺はまた前を向いて頑張れる
***
「大変です!お兄ちゃんが地方大会リレーに出るって!」
その言葉に、驚きの声をあげる皆。
俺は、少しの嫌な予感を覚えていた。松岡が、また面倒な方に空回っているのではないかと