The prime

□ending
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予算なしの合宿最終日、俺たちは浜辺で戦っていた。
そう、今日は遙の誕生日だったのだ。

中々準備が上手く進んでいないのが現実なのだが、なんとか後少しの所まできた。
のだが、まさかの頼れる真琴が帰ってきてしまう事態。


「よーし、こうなったらー最終手段!たっくん、ゴー!」

「お、おう…任せろ?」

「頼んだぞ!拓也!」

皆が"遙を引き留めよう作戦"に失敗する中、最後の最後で駆り出される。
自信は全くない

「遙ー」

「今度はお前か」

「神宮君!」

「先生、お疲れ様。今度は俺の番」

「で、拓也は何しに来たんだ」

「え?聞いちゃう?…うーん、いちゃいちゃしに?」

首を傾げながら言う。自分で言おう。男の俺がこの動作をやっても可愛くはないと
言ってから思ったけどこれ、天ちゃん先生冗談だって聞き流してくれるよね?もう一回やらかしてしまっているから、隠すということを面倒に思ってきている俺。
こんなではダメだとは思うのだけれど、今は合宿で、しかも今日は遙の誕生日なのだから…少しくらい現実を忘れたくもなってしまう

「笑えない冗談はやめろ」

遙は俺の仕草には特にコメントせずに、浜辺へ向かう為に外へ歩いて行く。
皆、ごめん。やっぱり駄目だったよ

「遙」

「なんだ」

「今日は、夕日が綺麗なんだ。お前気付いてた?ゆっくり眺めながら浜辺に行こう?ね、先生も」


丁度浜辺に3人で着いた頃に、準備は終わっていた。
遙は恥ずかしがってただの誕生日だろなんて言っていたけれど、素直じゃない。嬉しいなら、嬉しいって言えばいいのに。
まあ、そこが可愛いところでもあるのだけれど

俺は、そっと真琴と視線を合わせ、不器用な幼馴染について微笑んだ。



「そう言えば今更なんだけど、ハルちゃんって何でたっくんにだけ名前呼びをオッケーにしたの?確かマコちゃんにも遙って呼んだらダメって言ってたよね?」

「ああ、それはね」

俺よりも先に真琴が、過去のことについて話し出した。
正直助かる。俺は自分のことを話すのが得意ではないから



「遙ー」

「その呼び方したら口きかないって前も言ったろ」

「えー今口きいてるくせにー」

「今度言ったら本当に返事しないからな」

「頑なー」

「遙ー遙ー」
「ねーねー遙ってばー」
「なんだよーこれから海行くから誘おうと思ったのにさ」

「行く」

「よっし!掛かった!遙は相変わらず水には反応するのなー」



懐かしい、小学生の頃のやり取り

「それ以来めんどくさくなった」

真の理由は、当の本人が言葉にした。本当、ロマンも何もあったものじゃあない。

「それだけ!?」

「え、面倒臭いってだけの理由なんですか!?本当に!?」

「それだけなんだよねー。綺麗なエピソードとかが無いわけよ残念ながら」

「拓也は昔から粘り強いもんね」

「しつこい」

折角真琴が優しく言ってくれたのに遙ったら辛辣




そんなことを思っていた初夏から、月日は流れ、年を越えた。
寒空の下、スーパーの袋を持った俺は、愛しの幼馴染の所へ向かっている。

高校生で、バイトもしていない俺の持ち金は多くない。
だから、去年の遙の誕生日も何もあげられなかった。真琴と3人で毎年ケーキを食べる以外プレゼントをあげたこともない。
けれど、真琴には秘密のイベントが俺と遙の年明けにはあるのだ。

今年はそれに加え、恋人らしいものも

喜んでくれるかと不安になる気持ちと、いつものあの恥ずかしがり屋さんの反応なのだろうと決めつける気持ちの中、わくわくする俺がいた。
去年のクリスマスぶりの遙に会えるまで、あと少し


俺は、見慣れた階段を上る




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