The prime

□rise
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日焼けの遙は、目に毒だ。心臓に負担を掛け過ぎる。
そんな俺の命を危険に晒す男は、身体に付いた泡を流し、湯船に入って来た。
そこまでの距離はないのに、縮めるのに勇気がこんなにいるだなんて


"根にもってるからな"

うっかり家に帰ったらねだなんて答えてしまったけれど、俺に思い浮かぶ案なんて思春期ならではの欲ばかりだ。遙の機嫌を治すのに俺が喜んでどうする。…とまあ自分でツッコミつつ、行動はするのだけれど

湯で揺らめく日焼けのラインを撫でながら近づく。遙はじっと俺を見ていた。
ペタンと額に張り付く前髪を掻きあげ、見えた素肌にキスをした。

「好きだよ、遙」



恥ずかしい



「…機嫌治った?」

「治らない。なんでそれで治ると思った」

ですよね。
遙さんはこういうの特に求めていませんよね。ですよね。
恥ずかしいのを紛らわすために遙の前髪を軽く引っ張ると、得意の水鉄砲。

「ちぇ。俺だったら一発なのに」

「お前の求める恋愛は恥ずかしいな」

「そう?」

「そうだ。それより、もうリンス流してもいいか?」

「駄目です」

嫌がらせに、提案を拒否すれば遙の眉がきゅっと寄る。これは、嫌がらせがばれている証拠だ。
遙は、基本髪の毛などを手入れしない。けれど俺がいる時だけは俺に合わせて行うのだ。リンスも、化粧水も。
髪の毛がキシキシしている遙も、ニキビのある遙も好きだけれど、俺と同じ行動をする遙はもっと好きだ。好きだというより、俺のことが好きなんだろうと感じられるのが俺を安心させるのだ。

遙の手がこちらに伸びてきて、俺はてっきり技の掛けあいが始まるのかと思っていた。
が、それは杞憂に終わった。
首に回された腕により、ぐっと縮まる俺と遙の距離。優しいとは言えないキスの始まりに目を瞑るのを一瞬忘れた。それにより、遙の目を瞑るタイミングが何処なのかもばっちり目撃した。可愛い。
遙の舌が俺の舌と絡まる。柔らかい唇に、いつもと違う舌の味。

くっついて離れてを数回繰り返し、遙は再度呟いた。

「リンス、流していいか?」

いいよと言うしかない。
ぬるぬるして嫌だと早くリンスを流したがる遙も可愛いけれど、それだけのものを貰ったのだから。

俺の言葉を聞くや否や湯船から上がる遙。何度見てもいい、日焼け。
目に焼き付けるように見つめていたのに、それは思わぬものに邪魔された。

「あ、電気切れた」

「ちょっと待て、今変える。お前は動くなよ。」

真っ暗闇の中では、どうしても別の感覚に集中する。
ドアの開く音、遙の足音。その次に聞こえたのは洗面台下の収納ドアの音か

予備がすぐ近くにしまわれているだなんて、良くできた御宅だ。良くできた息子さんだ。今の俺では、1人暮らしなどできない。遙が遙で良かった。今この経験ができるのは、幾重もの偶然が生み出したもので、とても尊いものなのだとしんみりしてしまった。

「準備いいね」

「普通だろう」

「無駄がない感じ好きだよ」

湯船に片足を掛ける気配。
そう言えば、遙は電気のスイッチを切ったろうか、その問いは、照らされた遙の姿を見て答えが出た。

「あ、」

数分ぶりの遙の姿は、先ほどよりもずっとずっと厭らしくて
縁に乗った脚により、遙の局部は見えそうで見えない。それなのに、綺麗な尻のラインは丸見えだった。天上へ向けてあげた腕の筋肉、綺麗な脇。

もう駄目だと、俺はお湯からあがった。急に動きだした俺に、驚いた様子の遙。

「動いちゃ駄目だよ」

一杯一杯で伝えられたのはそれだけ。それでも遙は俺の言うとおりに動きを止めた。表情は、不満を表していたけれど。

遙の後ろに回って、しゃがみ込むと、先ほどまで見えなかった遙のペニス。勿論、俺のものとは違い大きくなっているなんてことはない。顔を近づけて、尻側からペニスにキスをした。その後は、尻、太もも、腰に同じくキスを落としながら舌も這わせる。初めて遙とこういった行為をした時のように、性的興奮よりも別の興奮が勝っていた。
遙のペニスが硬くなる前にと遙に此方へ向ける。その時に見た遙の表情から、興奮が読み取れた。おれと同じように、遙はこの行為に感じているのだ。
人生初のペニスは特になんの味もしなかった。まだ勃ち始めだったからかもしれない。手で感じたことのあるあの柔らかさを口でも感じたかったのだけれど、それは後でもいい。いつでもできるのだ。俺と遙はそういう関係なのだから。
口の中では、その成長が良く分からなかったが、夢中だったフェラを止め、口から出した時に実感した。アドレナリンのせいだ。感覚までオカシクなっている。自分のペニスの勃起を忘れるほどだ。相当だろう。

「なんで…」

先ほどから艶っぽい遙の声が風呂場に響いてえろいことこの上なかったが、このお願いもまた堪らない。

「もう少しでイケそうだったのに?」

「…」

ほんのちょっとだけ、言葉を期待したのだが、反応は予想通りのものだった。上から俺に期待の眼差しを向ける相手に不満はない。寧ろ、それが可愛いのだ。

もう一度、口にペニスを含んだ。喉元まで届くペニスに興奮する。俺はフェラが好きらしい。
先ほどのようにはもたず、遙は俺の喉に性を放った。勿論、遙の射精するタイミングはわかっていたのだが、してみたかったのだ。口で精液を受け止める経験を。案の定、最初の射精で噎せた。
すぐにペニスを口から出しせき込む。遙の射精の途中だというのに、申し訳無い気持ちと情けない気持ちで泣きそうだった。咳が止まらず実際に少し涙が出た。
飲み込むどころの話ではなかった。味や匂いよりも苦しさが勝った初めての経験

「大丈夫か、拓也」

「だ、大丈夫…」

俺が落ち着いた頃、遙は先ほどの射精がなかったかのような態度で俺の背中を摩っていた。微笑みを浮かべながら。

「笑うなよー、情けないさが増す」


遙は俺の言葉に返事をせずに、俺の腰に手を回す。そして、もう片方の手は俺の元気の無くなったペニスへ

「前から思ってたんだが、お前なんで先に進まない」

そんなことを、撫でながら言うものだから、遙はずるい

「こらこらこら」

俺は、その誘惑を必死に振り払った。大体、今日進んだではないか、フェラまで。

「遙とはロマンティックに初めてを迎えるんだよ」

俺の声を聞いて、遙の動きが止まった。

「言ってもいいか」

「…どうぞ」

「俺たちの始まりって」
「やっぱ言うな」

痛いところを突かれそうになったので、逃げるを選択する。十分なダメージは受けたが

「まあ、お前がそう言うなら別にいい。でもここまではいいんだろ?」

そう言った遙が今度は俺の前でしゃがむ。先ほどと立場の逆転だ。



***



風呂場での行為は、寝る前の今になっても顔が弛むものだった。
遙の舌が俺のペニスに触れて、遙が上目使いで俺の顔を見る。


「可愛かった…遙。ほんと」

「気持ちが悪い」

「愛しの恋人になんてこと言うの!」

「その返しも気持ちが悪い」


そんなことを無表情で言いながら、すぐ横で布団に包まる男は、俺の手を握ってくるのだ。暑いこの時期に。
可愛いという意外にどう言葉にすればいいというのか。





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