主人と僕の旅路
□夢
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「っはぁはぁ…」
逃げ出してからどのくらいの距離を走っただろうか、私はいつの間にか崖の上に来ていた。
やってしまった…。妖怪を滅せなければならないのに、出来なかった…。
私が芦屋家にいれるのは、妖怪を滅することが出来るから。滅することが出来ないのならば…私は芦屋家にいれない。
「はぁ…」
ため息をついた瞬間、肩に鋭い痛みが襲った。
「っん!!!」
肩を見てみると一本の矢が刺さっている。
そして矢を放ったのは…
「当主様…」
矢を放ったのは白髪が目立つ、芦屋家当主だった。
「鈴、何故妖怪を滅さなかった?」
「それは、その」
「お前ほどのやつが取り逃がしたということはあるまい。何せ安倍晴明の子孫なのだからな。まさかとは思うが…逃げ出したのではあるまいな」
「っつ!!!!」
「図星、か」
そう言って当主は矢を放ってくる。
「水竜、主の守りとなれ」
(竜の式神の一つ、水竜。水圧で敵を押し潰す攻撃を得意とする。が、今回の技は水の壁を作り敵の攻撃から自身を守ることができる)
しかし水で出来た壁は矢を防ぐことなく、私の脇腹に命中した。
「ぐっ」
「覚えておくといい。陰陽術は妖怪にしか効かない。つまり人間からの攻撃は防ぐことも出来ないし、人間に攻撃することも出来ない」
そう言って当主は弓を引く。
「鈴には期待していた。もっと力がつけば芦屋家の次期当主候補にするつもりだったのだが…。すまないな。だが、妖怪を滅することが出来ない者には芦屋家には必要ない」
私はなんとか一歩下がろうとするが、すぐ後ろは谷があることに気がついた。
「すまないな」
当主がそう言った瞬間、矢が放たれ私の胸に刺さった。
あまりの痛さと衝撃に体が後ろに傾く。
そして足に力が入らなくなり、私は崖から落ちた。
「私の夢、は…妖怪、と、仲良く…」