主人と僕の旅路 3
□魍魎丸の狙い
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川辺を阿吽に乗って進んでいく。
目の前には殺生丸様、隣には邪見。戦国時代に来てからのいつも通りの光景。それがなんだかとても久々のように感じる。
目を川に向ける。と、大きな妖怪の骨が沈んでいる。わずかに水辺から出ている甲羅が特徴的だ。
それに…。
私は阿吽から降りて、骨に近付いていく。そして軽く地面に膝をついた。
ジッと甲羅に目を凝らしていると殺生丸様が「冥王獣だ」と静かに呟く。
「冥王獣…」
顎に右手をそえる。
冥王獣…。古い文献で見たことがある。
「確か甲羅が最も堅いと言われる妖怪…」
「世の中広しといえども冥王獣の甲羅を斬る力があるのは、殺生丸さまくらいではあるまいかな?」
邪見が私の横にやってくる。
「でも邪見」と私。
「甲羅が一枚はがれてるんだよね」
「え」
邪見が一歩川へと近付く。
甲羅と甲羅の間にぽっかり空いている。そこに黒い跡。
「なんだか既視感…」と思わずぽつりと呟く。
「札の焼き付いた跡がある。おおかた人間の坊主にでもやられたんだろう」
やっぱり…。
殺生丸様は一瞬私の顔を見た後、ザッと歩き出す。
私もハッとして阿吽に乗る。
事が事だけに複雑な気分…。